晦−つきこもり
>二話目(鈴木由香里)
>O9

本気で、そんなこといってんの?
駄目だよ。
こういう時に誉めたりしちゃあ。
それとも、私に、母親の気持ちがわかんないと思って馬鹿にしてんの?

だったら、私、怒るよ。
そんなことないって?
なら、いいんだけどさ。
こういう時は、ピシッと叱らなきゃ。
ただでさえ、最近、しつけの行き届いてない子供が増えてるんだから。
子供は、叱られながら成長するもんだって。

上手に叱らないと、逆効果になる時もあるけどさ。
かっちゃんの母親も、我が子、かっちゃんをひどく叱ったよ。
「いい? 二度とこんなまね、するんじゃないよ!」
そういって、母親は小鳥の屍骸を取り上げると、家の中へ引っ込んでしまったんだ。

かっちゃんは、しゅんとうなだれてた。
少しは反省したんじゃん?
いい気味。
でもね、その考えは甘かったんだ。
母親がいなくなってしばらくたつと、かっちゃんは顔を上げたよ。

笑ってた……。
とても子供とは思えない、不気味に口を歪めた笑顔で。
この時、私は直感したよ。
もっとたくさんの命が消える。
この事件は、このままじゃ終わらないって。
そして、それは的中したの。

また、動物が死んだんだ。
今度は、家の周辺を縄張りにしている野良猫だった。
野良猫が一匹死んだところで、誰も気にしないじゃん。
野良猫の屍骸なんてさほど珍しくもないし、あんまり凝視するものでもないからさぁ。

みんな、顔をしかめる程度で、さほど気にしてなかったよ。
でも、私は一見しただけで、その屍骸の不自然な点に気付いたんだ。
それは、どんな点だったと思う?
1.バラバラに引きちぎられていた
2.刃物で斬られた跡があった