晦−つきこもり
>二話目(鈴木由香里)
>U4

だったら、子守りが大変なんていってらんないじゃん。
ベビーシッターだって、重労働だけど、母親になったら子守りじゃなくて、育児になるんだよ。
体力と、愛情と、責任感がなきゃ子供なんて育てらんないって。
はっきりいって、子供を産んで育てるなんて、私は死んでもごめんだね。

何でって?
子供が嫌いだからさ。
私は、子供が嫌い。
わがままで、うるさくて、泣けばなんでも許されると思ってるんだから!
だから、私、たとえ結婚しても、自分の子供だけは欲しくないんだ。
子は、親に似るっていうじゃん。

私、自分そっくりの他人がいたら、すっごく、その人のこと嫌いだと思うんだ。
まだ、そんな人には、お目にかかったことないけどね。
この性格は、自分だから気に入ってんの。
こんな性格の他人は、大っ嫌いなだけ。

たとえ、それが我が子でもね。
……私だって、昔っから子供嫌いだったわけじゃないんだよ。
私が、子供嫌いを認識したのも、やっぱり、このバイトがきっかけだったと思うなぁ。
普通、三才児っていえば、もう歩けるし、わりと言葉もしっかりして、どんな子でも可愛く見える頃だよね。

その子も、あどけない可愛い子だった。
見た目だけはね……。
名前?
さぁ、何だっていいんじゃん?
もう忘れちゃったよ。
そうだなぁ、どうしてもっていうんなら、『あっちゃん』かな。

悪魔の、あっちゃん。
妖怪の、『よっちゃん』でもいいよ。
どっちにする?
1.あっちゃん
2.よっちゃん
3.どっちも嫌だ