晦−つきこもり
>二話目(前田良夫)
>I6

だから、念には念を入れた方がいいと思ったんだ。
もう少しだけ待ってみよう。
俺たちは、そう決めたんだ。
それから一時間、時計を見つめてたよ。
みんなビビって、自分の部屋に帰ろうとしなかったから、全員でさ。

……だけど、あいつらは戻ってこなかったんだ。
何かあったんだ。
俺は、先生を起こすことにした。
怒られたって構うもんか。
俺は、先生たちの部屋のドアをどんどんと叩いた。

「先生! 先生、起きてください!」
ところが、先生は起きてくれないんだ。
試しにドアを引っ張ったら、鍵はかかっていなかった。
だから俺、部屋の中に入ってみたんだ。

先生たちは、布団をかぶって寝息をたてていたよ。
俺は先生を乱暴に揺すった。
「先生! 先生ってば!」
……それでも起きない。
何か変だ。
叫ばれて、揺り起こされて、それでもピクリとも動かず眠っているなんて。

そう思っていたとき、仲間の一人が走ってきたんだ。
「前田、変だぞ! みんな、全然起きないんだ。揺すっても叩いても、駄目なんだよ」
泣きそうな声だった。
ということは、この宿舎の中で、起きているのは俺たち四人だけだ。

帰ってこない三人のことも気になるけど、この状況も心配だった。
いったい何が起こっているのか、見当もつかないんだ。
葉子ネエには、わかるか?
1.わかる
2.わからない