晦−つきこもり
>三話目(真田泰明)
>S10

そうか、俺は戸惑った。
そしてもう一度、ノブをとったんだ。
するとドアが開いたのさ。
さっきは確かに鍵がかかってたのに……。
中はシーンと静まり返っている。
誰も居ないようだ。

鍵が壊れたっていうんじゃなくて……。
誰かが鍵を開けた、そんな感じだった。
家の中は、シーンと静まり返り人の気配はなかった。
不法侵入だな……。

俺の頭にはそんな現実的な考えが浮かんだが、それを実感として受け取ることはできなかった。
このモラルの欠けた行動に、何の抵抗も感じなかったのさ。
そしてさらに奥へと、俺は足を進めたんだ。
静まりかえった家の中は、時折、寒気すら感じる。

この異常な雰囲気が、俺の気のせいなのか、それとも本当に何かがいるのか、まったくわからなかった。
さらに奥へ進むと、廊下は一つのドアに突き当たった。

俺はドアを開けたんだ。
「北崎……」
そこには北崎洋子が立っていた。
俺の体は硬直した。
ふいに、何かが風を切る音がして……。
俺の頭の上を何かが通り過ぎたんだ。
その音の方を見ると……?

俺は、視線を彼女の方に戻した。
彼女は無気味な笑顔を浮かべている。
戦慄が走った。
なぜ……!? 住居侵入で殺意まで抱かれるのか?
俺は混乱していたよ。
それでも、ゆっくりと立ち上がり、一歩ずつ後退りしたんだ。

彼女は、柱から大型ナイフを抜くとゆっくり俺の方に歩みだす。
俺は当惑した。
この事態をどう理解していいかわからなかったんだ。
ただ、俺に危険が迫っているのは確かだ。
俺は逃げた。

玄関のドアのノブを必死で回すが、ドアはまったく開かない。
鍵は掛かっていないのに、まるでボンドで張り付けられたように、ドアはピッタリと閉じられたままだったんだ。
彼女はそれを見越したように、ゆっくり近づいてくる。
俺は別のドアに走った。

ドアを開け中に入るとそこはリビングだったのさ。
俺はソファーを避け、奥に進む。
そして、テラスから庭に出た。
庭は芝生が植えられ、やけに広い。
まるでゴルフのグリーンの様だったよ。
俺は出口を探した。

道路の方に扉があるが、ガッチリと鍵が掛かっている。
庭は高めの塀に囲まれ、壁の上は鋭く尖った金属が据えられている。
(壁も駄目か……)
俺は当惑した。
この状況から、どうやって……?

と思って、俺は辺りを見回したんだ。
だが、そこは袋小路だった。
こんな時、葉子ちゃんだったらどうする?
大怪我覚悟で壁に登るかい。

まあ、大事の前の小事と思って、怪我する覚悟ができるかってことなんだけどさ。
1.命が助かるなら、怪我ぐらい
2.彼女と話してみたら?
3.戦うしかないと思う


◆一話目〜二話目で石の話を聞いている場合
1.命が助かるなら、怪我ぐらい
2.彼女と話してみたら?
3.戦うしかないと思う