晦−つきこもり
>三話目(山崎哲夫)
>D8

見たことない?
まあ、滅多に見られるものでもないしな。
いや、自分もな、あの時が初めてだったよ。
火の玉なんかを見たのはな。

自分が見た火の玉は、ちょうど野球のボールぐらいの大きさでな。
それが、めらめらと青白い光を放って、燃えているんだ。
その光はな、思った以上に明るくてな。
辺り一帯を昼間のように、明るく照らしていたよ。

そんな火の玉の光が、テントの中を照らしているんだ。
テントの中を見回すと、まるで昼間のようなんだよ。
自分は、気味が悪くて仕方がなくてな。
もう一度藤澤を起こそうとしたんだ。

その時だ!
テントの外に人の気配がしたんだよ!!
周りを見てみると、テントにな……。
テントに、人影が映っていたんだよ!!
一つだけじゃないぞ。

一つ……二つ……三つ。
いや、それ以上かもしれない。
その人影が、テントの周りを走り回りながらな。
テントをばしばしとたたいているんだよ!

「藤澤ぁ! 藤澤起きてくれ!」
自分は、必死に藤澤を起こそうとしたんだ!
それでも藤澤は、起きないんだよ!
自分はな、必死になってお経を唱えた。
お経なんか、よく知らないけどな。

適当に聞いたことがあるようなやつを、何度も何度も繰り返したんだ。
それこそ、必死になってな。
そうしたらな、葉子ちゃん。
どうなったと思う?
1.助かった
2.霊が怒った