晦−つきこもり
>三話目(山崎哲夫)
>W3

ええ!?
おもしろいと思わない?
そんな、馬鹿な……。
葉子ちゃん、よく考えてごらんよ!
血がたぎってこないかい?
こう、胸の奥からな、沸々とたぎるものを感じるだろ?

感じないの?
なあ、葉子ちゃん。
感じるだろ?
……自分だけなのか……。
そんな馬鹿な。
自分がおもしろいと感じるものを、人がおもしろいと感じないはずがない!

あ、わかった!
葉子ちゃんが、特別なんだよ。
だから、面白いと思わないんだ!
そうか、そうか、やっと納得いったよ。
かわいそうにな、葉子ちゃん。
人生の楽しみの半分を失ったようなものだよ。
かわいそうに……。

……哲夫おじさんって、自分が感じることを、人も感じていると思っているのかしら……。
まあ、いいわ。
放っておきましょう。
どうせ、何をいっても通じないんだから。

で、続きなんだがな。
自分らは、自然を慈しみながらゆっくりと登っていったよ。
一日目が過ぎ、二日目が過ぎ……。
そして、とうとう三日目、最後のキャンプとなった。
自分らは、比較的小さな石が敷き詰められた、河原のようなところでキャンプすることにしたんだ。

沢の流れは、細く、緩やかになっていてな。
そこから聞こえるせせらぎは、疲れた心身をリフレッシュしてくれた。
周りには木々が生い茂っていてな、太陽の光を反射してとてもきれいだったよ。

自分らはそこにテントを張って、最後の夜を迎えたんだ。
その日は最後ということで、たき火を囲んでビールを片手に楽しく語り合ってな。
話し込んでいたら、それまでの疲れも手伝って心地よい睡魔が襲ってきたんだ。

自分らは、早速テントに入り、眠りについたんだよ。
………………………………。
(今、何時なんだろう……)
自分はテントに入ると、すぐに眠ってしまったんだがな。
途中で目が覚めてしまったんだ。

それからは、なかなか寝付けなかったよ。
外からは、せせらぎの音が聞こえる。
その音を聞いていれば、眠ることができるだろう……。
そう思った自分は、せせらぎの音に神経を集中したんだ。

ん? 人の声がするぞ……。
せせらぎの音に混じってな、なんだか人の声がするような気がしたんだよ。
やっぱり、誰かいるな……。
自分らは、二張りのテントを張って分かれて寝ていたからな。
もう一つのテントの奴らかと思ったんだ。

自分は、藤澤という奴と二人で寝ていた。
もう一つのテントには、残りの三人が寝ていたからな。
そいつらも寝付けなくて、外にでも出たんだろうって思ったんだ。

自分も外で、話に参加してみるか。
そう思ったんだけどな。
話をすると、よけいに目が覚めそうな気がしてな。
どうしようかと思ったんだ。
葉子ちゃんなら、どうする?
1.外にでてみる
2.外をのぞいてみる
3.黙って寝る