晦−つきこもり
>三話目(前田良夫)
>C7

だから俺は、手を差し出した。
「もらうよ。でも、本当に本物なんだろうな」
「僕が君に、嘘なんてつくわけないだろう?」
オヤジは、俺の手に卵を載せた。

ほんわりと温かくて、思ったより重い。
「大切に暖めるんだよ。きっと幸運が生まれるからね」
そういうオヤジの顔は、真剣だったぜ。
これは本物だ!
俺は卵をシャツでくるんで、走って家に帰ったんだ。

でも、暖めろっていっても、どうすりゃいいんだ?
何か、いい方法はないかなあ。
考えてたとき、ふと思い出したことがあった。
うちの近くに、養鶏場があるのを知ってるか?
1.知っている
2.知らない