晦−つきこもり
>四話目(前田良夫)
>J7

変なヤツ!
……ええと、とにかく俺は、遊びに行ったんだ。
その途中で、園部茜を見かけてさ。
あの、まじめそうな園部が、規則破って出歩いてるなんて?
胸に何か包みを抱えて、すたすた歩いてた。

俺、何となく後つけちゃったんだ。
そうしたら、あいつ墓場に行くんだよ。
ほら、はずれの方にあるじゃん。
墓参りかと思ったら、そこ通り抜けちゃってさ。

奥の山に入ってくんだ。
あんなとこ、ほとんど道だってないじゃん。
何とか、草がはげてるとこが、道っぽいかなってくらいでさ。
なのに、ためらいもしないで登ってくんだよ。
五分くらい歩いたかなあ。

広場みたいなとこに出たんだよ。
あんなとこ、初めて見たなあ。
仲間のアジトにするには、ちょうどいい広さだったけど……なんか、そんな感じじゃないんだよな。
やな感じっていうか、落ち着かないっていうかさ。

古くてでっかい石コロが、いくつか転がってたっけ。
園部はしゃがみ込んで、いきなり土を掘り始めたんだ。
机くらいの大きさの穴が開くと、包みを中に下ろした。
そのとき包みがほどけて、中身が見えたんだ。

死んで、足の指を固く握りしめた小鳥たち。
学校で飼ってたヤツだと思うんだ。
園部は、ていねいに土を埋め戻してた。
それから両手をあわせて、ちょっと拝むみたいな真似してから、元来た道を帰ってったんだ。

あいつがいなくなってから、俺、広場に出てってみたんだ。
転がってる石を近くで見たら、文字が彫ってあるみたいだった。
何かほら……墓石みたいに。
俺、ソッコーで帰ったよ。

だって、何かヤバイ感じじゃん。
そう思わない?
1.確かに……
2.どこが?