晦−つきこもり
>五話目(真田泰明)
>N3

ははっ、だったら初めから、そういえよ。
正月にやったのは、原因不明で人々が次々と死んでいく事件のドキュメントだった。
取材のきっかけは、次々と死んでいく街の話を聞いたことだったんだ。

そのときは、まだドキュメントにするとは決めていなかったけどさ。
取り敢えず、取材を始めることにしたんだよ。
予備調査が終わり、俺は報告書を読んだ。

それには、ある地方都市で集中的に人が死ぬという以外は、特に死んだ人々の共通点は無かった。
(単なる偶然なのかな………)
俺は取材の価値はない、そう思いかけていたんだ。
しかしディレクターの長岡さんが、この取材の継続を主張したんだ。

「小規模でいいですから、この取材を続けたいんですけど」
俺は迷った。
しかし、特に手が掛かる仕事も抱えていなかったんでさ。
来月のプロジェクトが始まるまでということで、許可することにした。
それで俺達は調査資料の整理から始めたんだ。

死んだ人達の経歴などを調べると、いっては悪いけど、死んだ方がましって感じの奴がほとんどだった。
「何か、悪人だけがかかる病気でも、あるんですかね」
長岡さんが資料を見ながら、楽しそうに話しかけてきた。
ほんとうにそんな感じだ。

しかし中には、子供もかなりいる。
(悪人を倒す正義の味方が、やったわけでもなさそうだな………)
俺は途方に暮れ、そんなことを思いながら笑ったんだ。
まあ、とにかく資料の整理をスタッフは手分けをして続けた。

そして、人々が死んだ場所が、かなり限定されていることがわかったんだ。
「一定の道の周辺、時間も、多少ばらつきはありますが集中してますね………」
長岡さんが表にまとめられた資料を読んで、そんなことを呟いた。
確かにその通りだった。

もし誰か、一人の人間がその死亡に関わってるとしたらさ。
この行動範囲、そして時間に行動する人間の筈だよね。
葉子ちゃんは、この事件どう思う。
1.殺し屋のせいじゃあないかな
2.毒なんかで汚染されているんじゃあないかな