晦−つきこもり
>五話目(前田和子)
>L13

「風間さんは和子おばさんのことを、すごく素敵だっていってます!!」
私は、これ以上ないくらい大声で叫んだ。
「ええっ!?」
急な返事に、和子おばさんはとまどっている。

「あんなにきっぱりというってことは、そうとう和子おばさんのことを愛しているんじゃないでしょうか! ええ、きっとそうに違いありません!!」
「そ、そんな……葉子ちゃん、そんなことないわ。きっと何かの間違いよ」

「間違いィ?」
机をドンと叩く。
「ひっ!」
和子おばさんは脅え始めた。
(ち、ちょっと葉子ちゃん。和子をいじめるなよ)
風間さんがごちゃごちゃいう。
「うるさい、みんなうるさいっ!!」

私は腕を振り回し、めちゃくちゃに怒鳴った。
「ど、どうしよう。この子、とり憑かれてる!」
和子おばさんが頭を抱える。
「降霊は中止よ! 何か変な霊を呼んでしまったのかもしれない。
ほにゃらかぷーーーっ、はにゃらかぴーーーっ、なむなむなむ、はーーーーっ!」

……………………和子おばさんが大声で呪文を唱えると、突然電気が消えた。
(和子。ひどいよ。わたしを祓おうとするなんて……)
「きゃーーーーっ!」
「し、静まりください! どなたの霊か存じませんが、お静まりくださいっ」

和子おばさんの言葉で、空気がひきつった。
変な霊扱いされた風間さんの怒りが伝わってくる。
(もう許せない。いいか、よく聞け。この場にいる者を、わたしが恐怖のどん底に叩きこんでやる)
ど、どうしよう。
風間さんの生霊は、何をするつもりなの?

(今から怖い話をしてやる。わたしの話に、みんな震えあがるはずさ。いいか、わたしがこれからいうことを、ちゃんとみんなに伝えるんだぞ)

……なんなの?
この人、ここで怪談に加わりたいわけ?
(さあ、葉子ちゃん。お話してあげる)
頭の中で、うふふという笑いが響いた。
1.お話してもらう
2.抵抗する