晦−つきこもり
>五話目(鈴木由香里)
>A2

……お墓だよね。
はっきりいって、建物の跡なんてほとんどなかった。
調査する敷地一面、お墓が並んでるだけだったよ。

お墓っていっても墓石や卒塔婆はほとんど残ってないし、残ってたとしても折れてたり、倒されて柱の台に使われてたりで、墓穴とは全然別の場所で見つかるんだ。

墓穴には、骸骨の入った棺桶が並んでるだけ。
昔の棺桶って、今みたいに細長い長方形じゃなくて、丸い樽のような形なんだよ。
土葬が主流の時代だから、当然その中には死体がそのまま納められてる。

もう骨になってるけどさ。
もう時代が古すぎるのと、土の色が染み付いちゃってるのとで、黒かったり茶色かったり黄色かったり、中には多少緑がかってるのまであったっけ。
真っ白い骨なんて一つもなかった。

そんな骸骨の入った桶が何百個もあるんだよ。
なかなかすごい眺めなんだから。
……あら、どうした?
顔色が悪いんじゃん?
1.気持ち悪くなった
2.まだまだ平気