晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>3T4

(テラス………、そこから出れるかもしれない)
俺はそう思った。
「あのテラス開かないかな………」
そして誰にいうともなく、そう呟いた。
「そうだ………、そうですよ。そこから出ればいいんですよ」
吉川は嬉しそうに叫んだ。

そして今までとは別人のように、足早にテラスに向かう。
みんなも彼の後に続いた。
吉川はカーテンを開け、鍵を探している。
そこの扉は両開きの扉で、簡単な錠がかかっているだけだった。

吉川はあわてているせいか、もどかしい手つきで鍵を開けている。
扉は、スーッと吸い込まれるように開いた。
俺達はまるで風に流されるように、外にでる。
外はヒンヤリとして、風一つない。
俺達は屋敷の外へと急いだ。

空の月は、赤く澱んだ色をしている。
そしていつもより大きく見えた。
(嫌な月だ………)
俺は庭の生け垣を走りながら、そんなことを考えていた。
「やけに広い庭だな………」
花田さんが息を切らしながら、そんなことを呟く。

丁度、俺もそう思っていたところだった。
俺は立ち止まる。
そして俺は振り返ると、屋敷を見た。
(屋敷の裏側か………)
俺はこの辺りの地形を、思い出そうとした。

「泰明さん………、どうしたんですか」
河口君が走るのをやめ、俺の所まで戻ってきた。
そして河口君と一緒に、吉川も戻ってきている。
「何か方向、間違っていないかな………」
みんなは顔を見合わせている。

「確かにかなり走っているのに、壁に突き当たらないのはおかしいですね」
河口君も俺と同じような疑問に、突き当たったようだ。

「どっちだっていいじゃないですか。とにかく、あの屋敷から早く離れましょうよ」
吉川は泣きだしそうな声で、そう主張する。
1.玄関の正面まで行ってみよう
2.とにかく屋敷を離れる方が先だ