晦−つきこもり
>六話目(山崎哲夫)
>C10

そう、そうなんだよ!!
こっそり逃げるしかないよなあ。
それで自分は、まず相手の意表をつこうと思ったんだ。
どんな作戦に出たかわかるかい?
……激しく踊ってみたんだよ。

ンバンバ族は驚いて、しばしの間立ちつくしていた。
そうだよなあ。
これから釜ゆでにされるって奴が、踊るなんて変だよな。
自分は、ンバンバ族が顔をしかめている間に、さりげなく出口まで進んだんだ。

「ンババ、ンバーッ!!」
出口をくぐると、ンバンバ族はようやく状況がのみこめたらしく、走って追ってきた。
自分も懸命に走ったよ。
両手を縛られていたから、かなり辛かったけどな。
命にかかわることだから、もう必死だ。

逃げている途中で、いくつかの干し首を踏んだよ。
だって、あちこちの地面に置かれて干してあったんだから。
奴らは、よっぽど好戦的な種族だったらしい。

葉子ちゃん、干し首って結構柔らかいんだよ。
干しぶどうみたいな感じでな。
知ってた?
知ってるわけないか。

「ンババーッ!!」
ンバンバ族は、怒り猛って追いかけてきた。
それだけじゃない。
手当たり次第に、ヤリを投げてきたんだよ。

今度こそやられると思った。
だが、自分は最後まで諦めなかったんだ。
諦めたら負けだからな。
わかるかい、葉子ちゃん。
諦めたら負けなんだよ!!
自分はがんばったんだ!!
自分は……はあはあはあ。

うう、息が切れる。
ごめんな、続きが聞きたいだろ?
ちょっと待ってくれよな。
ゴホッ、ゴホッ。
うん、もう大丈夫だ。
すまんな。
それでな、葉子ちゃん!!

自分は、ついに崖まで追い詰められたんだ!!
「ンバ、ンバ」
ンバンバ族は、ニヤニヤ笑いながらにじり寄ってきた。
自分の首を、手にいれられると思っていたからだろう。
もう、どこにも逃げられなかった。

両手は縛られていたから、崖に身を投げたらすぐにあの世行きだ。
それで自分は、賭けにでたんだよ!!
1.戦ったの?
2.また踊ったの?