晦−つきこもり
>六話目(山崎哲夫)
>E9

うん、大当たりだ!!
自分は、長い刃物と台座を指さしたんだ。
たくさんの干し首をつけたンバンバ族が、長い刃物を持った。

そして、幾人かのンバンバ族が、自分の両手をがっしりと掴んだんだ。
自分は、最初従順なふりをして、刃物と台座の方に近寄っていった。
刃物を持ったンバンバ族は、自分に向かって呪文のような言葉を唱えていた。

そして、長い刃物を振り下ろしたんだ。
「ギャーーッ!!」
叫んだのは、周りのンバンバ族だった。
自分は、間一髪で刃物を避け、手を縛っていたロープが切れるように体を動かしたんだ。

「ンババーッ!!」
ンバンバ族は、叫びながら自分に突進してきた。
だが、体が自由になればこっちのもんだったよ。
自分は、そいつから刃物を奪うと、建物の中央に吊るされたベールに向かって走っていったんだ。

ベールの中には、ンバンバ族の長がいる。
自分は確信していた。
そいつを人質にして、逃げ出そうと思っていたんだよ。
「んばーっ!!」
自分は、ンバンバ族の風習にならって、叫びながらベールの中に侵入した。

しかし中には、誰もいなかったんだ。
しまった!
今日は、長が不在なのか?
ンバンバ族は、自分の後を追ってすぐそこまで来ている。
すぐにヤリを持って、ベールの中に入ってきた。

追い詰められた。
もう逃げられない!!
自分が絶望した時、ンバンバ族はいきなり雄叫びをあげたんだ。
「ンバーッ!!」
ンバンバ族の視線は、自分の後ろに集中していた。
それで、後ろを見てみると……。

豪華な台座の上に、奇妙な形をした石が置いてあったんだ。
どうやらそれは、連中にとって大切なものらしかった。
神像だったんだろう。
迷っている時間はなかった。
自分はその石を掴み、刃物を押し当てたんだ。

その判断は正しかった。
ンバンバ族は、いきなりおろおろし始めたんだよ。
自分は、敵に背中を見せないようにしながら、ゆっくりとベールの外に出た。
もちろん、時々敵を威嚇することも忘れなかったよ。

がっはっは、おかしかったなあ。
自分が、んばーっといえば、奴等は身を縮こまらせていたんだから。
そうして、命からがらキャンプをしていた湖まで戻ったんだよ。

……あの国で発見されたという伝説の恐竜は、生き物ではなかったんだ。
ンバンバ族の神殿だったんだよ。

自分は、すぐさま帰り仕度を始めた。
そして、予定より早く帰国したんだ。
……はあはあ、怖い話だったろう?
1.怖がってあげる
2.鼻で笑う


◆一話目〜五話目で石の話を聞いている場合
2.鼻で笑う