晦−つきこもり
>六話目(鈴木由香里)
>C3

もしかしたら、偽物かも……。
そんな考えがフッと頭をよぎったの。
別に、哲夫おじさんのいうことを、信じたわけじゃないんだけど……。
こんなに大きい宝石って見たことないから、なんとなくオモチャっぽく見えちゃう。

……でも、こんなこと間違っても、由香里姉さんの前じゃ口にできない。
他のみんなは、何を考えているのか、じっと押し黙ったまま……。
………………。
………………。
………………。

なんだか、重苦しい沈黙が流れてる。
いつまでこうしてるんだろう?
って、思った時……!
「がっはっはっはっは」
っていう豪快な笑い声が、沈黙を破ったの。
こんな笑い方するのは、哲夫おじさんしかいない!

「いやー、みんな黙り込んじゃってどうしたんだい? もしかして、本物のスンバライトを見たことないんだな。仕方ないなぁ、それじゃ、自分が特別に見せてやろう」
「ええっ!?」
……ってことは、哲夫おじさんも、スンバライトを持ってるっていうの?

哲夫おじさんほど、宝石に縁がない人もいないんじゃないかって思ってたのに……。
「いいかい? よく見ておくんだぞ」
そういうと哲夫おじさんは、ズボンの後ろポケットへ手を伸ばす。
そして……、

「ほら、これが本物のスンバライトだ!!」
哲夫おじさんの声と同時に、強烈な光が辺りを包んだの。
ま、まぶしい……!
何なの! この光は!?
これが、本物のスンバライトの輝きだっていうのかしら……。

「さぁ、もういいかな?」
哲夫おじさんがそういうと、室内に満ちていた光は跡形もなく消えてしまったの。
その代わりに、哲夫おじさんの手には小型のペンライトみたいな物が……。
……ちょっと待って。
なんだか嫌な予感がする……。

「がっはっはっはっは。どうだい、ものすごい光だっただろう。世界中の冒険家たちに愛用されてる超強力懐中電灯、その名も『スンバライト』だ! がっはっはっはっは」

……………………………………… ……………………………………… ……………………………………… …………………………………えっ?
哲夫おじさんのいう本物のスンバライトって、懐中電灯のことだったの?

「がっはっは…………って、みんな、どうしたんだい? 面白くなかったかな?」
1.面白かった
2.面白くない