晦−つきこもり
>六話目(鈴木由香里)
>S10

「誰が何といおうと、私は泰明さんに似たのーーー!」
それは、叫んだ私自身もびっくりするような大きな声だったの。
泰明さんや由香里姉さんばかりでなく、他のみんなまでが、ポカーンと口を開けて私を見てるんだもん。

なんだか恥ずかしくなっちゃった。
でも、もう後には引けないよ。
『私は、泰明さんに似たの!』
……何がなんでも、これだけは譲れないわ。
でもね、せっかく私が一大決心してるのに、由香里姉さんたら、

「そんなこと、どーでもいいよ。
じゃ、話を続けるね」
なんてこというのよ。
私の一大決心も、無駄に終わっちゃった。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか……。
「いい? ちゃんと聞いててよ。
本当に奇妙奇天烈だったのはこの後なんだから……」

って、由香里姉さんは嬉しそうに喋り始めたんだ。

まぁ、どんなパーティーでも全員が席に着いたら、簡単な挨拶があって『乾杯!』になるよね。
この時はね、乾杯が無事終了すると、風間家の親族紹介が始まったんだ。
新郎の父がいて……。
新郎の祖父がいて……。
新郎の曽祖父がいて……。

……とまぁ、このくらいまでなら全然普通じゃん?
ところがさ、この後、曽祖父の父親、その父親、その父親の父親…………って感じで、何十代も前の御先祖様まで延々続くんだよ。
親族の紹介っていうよりは、家系図を実際に見せられてるような気分だった。

ここまでくると、タチの悪い冗談としか思えないよね。
もしこれが事実なら、その人たちって、いったい何才になってるっていうのよ。
ねぇ?
1.本当にタチの悪い冗談ね!
2.すごーい世界記録ね!