晦−つきこもり
＞六話目（鈴木由香里）
＞W9

「良夫に…………」
……っていいかけて、私は慌てて口を閉じた。
「そういえば葉子って、良夫にそっくりだよね」
「うんうん、よく似てる」
……なんてことを、みんなが口々に喋り始めちゃったから……。

私が良夫に似てるなんて、絶対に嫌ったら、嫌！！
だいたい、私よりも良夫の方が後に生まれたんだから、『私が良夫に似てる……』じゃなくて、『良夫が私に似てる！』っていうのよ。
まったく、なんでも人の真似ばっかりするんだから……。
嫌な奴。

ここは早く話題を変えて……。
そうだ、由香里姉さんの話の続きを聞かなきゃ！
「由香里姉さん、それじゃあ話を続けて下さい」
「ＯＫ。じゃ、話を続けるよ。本当に奇妙奇天烈だったのはこの後なんだから……」

まぁ、どんなパーティーでも全員が席に着いたら、簡単な挨拶があって『乾杯！』になるよね。
この時はね、乾杯が無事終了すると、風間家の親族紹介が始まったんだ。
新郎の父がいて……。
新郎の祖父がいて……。
新郎の曽祖父がいて……。

……とまぁ、このくらいまでなら全然普通じゃん？
ところがさ、この後、曽祖父の父親、その父親、その父親の父親…………って感じで、何十代も前の御先祖様まで延々続くんだよ。
親族の紹介っていうよりは、家系図を実際に見せられてるような気分だった。

ここまでくると、タチの悪い冗談としか思えないよね。
もしこれが事実なら、その人たちって、いったい何才になってるっていうのよ。
ねぇ？
１．本当にタチの悪い冗談ね！
２．すごーい世界記録ね！