晦−つきこもり
>六話目(前田良夫)
>F4

葉子ネエって、戸波と同じタイプなんだな。
ヤツも、自分には勇気があるって、思っちゃったんだよ。
それで振り向いた…………。
瞬間、両目にものすごい痛みが走ったんだ。

「約束も守れぬ下等生物が……」
吐き捨てるような、冷たい声が聞こえた。
でも戸波は、それどころじゃない。
たき火の燃えさしを突っ込まれたみたいに、目が熱いんだ。
痛いんだよ。

「ぐわああーーーーーーっ!!」
あまりの痛みに、戸波は両目に指を突っ込んだ。
そして、自分の目玉をえぐり出しちゃったんだよ!
血まみれの手から、目玉が落ちて、床に転がった。
と思ったら、ボッて音がして、燃え出しちゃったんだって。

目玉はパチパチいいながら、炎にあぶられて縮んでった。
…………次の日になって、戸波の死体が見つかった。
かなり騒ぎになったって。
だって、公衆トイレの中に、血の涙を流した死体が、二つも転がってたんだもんな。

その話を聞いてから、うちの学校のヤツは誰も、駅前公園のトイレには入んなくなったんだよ。
そいつに会っちゃったら、やだもん。
だけど……鏡に映らないバケモノって、何なんだろうな?

これが、魔の公衆トイレの話だよ。

(→聞いていない話がある場合)
(→全ての話を聞いた場合)
(→全ての話を聞いたが、「6.生きている骸骨」の話の最初の選択肢で「3.百六十センチは、絶対にないわよね」を 選んでいる場合)