晦−つきこもり
>六話目(前田良夫)
>G4

うん、それが普通かもな。
戸波も、じっと固まったまま、鏡を見てた。
自分の側の蛇口から、水が勢いよく流れ出す。
そいつが蛇口をひねったんだ。
水玉をまき散らしながら、バシャバシャやってる。
どうも、手を洗ってるらしい。

それから、きゅっと栓を閉めて、洗面台から離れた。
鏡に映らないそいつの、足音だけが、ゆがんだ顔の戸波の背後を回り込んでく。
そのまま、ゆっくりとトイレを出て行くんだ。
今ならきっと、ヤツの背中くらいは確認できるはずだ。
どうする、葉子ネエ?

葉子ネエだったら、このチャンスを逃すなんてこと、しないよな?
1.もちろん。振り返ってやるわ
2.遠慮しときます