晦−つきこもり
>六話目(前田良夫)
>I2

ピンクさんかあ。
この話は、ちょっと特別なんだよな。
なんでかっていうと、ピンクさんはホントにいるからさ。
よくある『口裂け女』レベルのうわさとは、全然、別なんだよ。
俺も見たことあるんだぜ。

だって、下校時刻になると、いつも校門の辺りにいるんだもん。
ピンクのフリフリのドレスなんか、着ちゃってさあ。
女子が遊ぶ、着せ替え人形みたいなテカテカの生地なんだ。
それで、ピンク色の地に白い水玉がついた、パラソルっていうの?

あれ持ってんの。
頭にも、ピンクのでっかいリボンつけてんだぜ。
すごいよなあ。
それでさ、一人で帰る小学生見つけると、ササッと近寄って聞くんだよ。
「宝石は欲しくないかい?」
……ってさ。

欲しいっていうと、今度はどんな宝石が欲しいかって聞くんだってさ。
そこで、なんかの決まりがあって、それに合った答えをいわないと、殺されちゃうらしいんだ。
でも、ちゃんと答えると、ホントに宝石くれるんだって。

……あ、葉子ネエ、なんだよその顔。
信じてないわけ?
1.ただのハデ好きな、おばあさんじゃないの?
2.ピンクさんっていう、そのネーミングが怪しいわよね