晦−つきこもり
>六話目(前田良夫)
>I3

見たこともないくせに、そんなこと、どうしていえるんだよ?
ピンクさんは本物だよ。
隣町に、片山って女子がいるんだけどさ。
二年生まで、うちの学校に通ってたんだよな。
そいつの兄ちゃんが、小学校のとき、ピンクさんに会ったんだって。

くもった、薄暗い日だったらしいぜ。
週番で遅くなった片山の兄ちゃんが、一人で校門から出ていこうとしたんだ。
そしたら、すぐ横でしゃがれた声が聞こえた。
「宝石は欲しくないかい?」
振り向くと、いつの間にかピンクさんが側にいるんだよ。

うわさは知ってても、ホントにピンクさんがしゃべってるのを聞いたヤツって、いなかったんだよな。
だから、ビックリしたって。
それであわてて、よく考える前に、つい答えちゃったんだ。
「はい、欲しいです」
ピンクさんは、ニヤッと不気味に笑った。

「そうかい……それじゃあ、どんな宝石が欲しいんだい?」
宝石ったって、いろいろあるよな。
俺は、あんまり知らないんだけど、葉子ネエってどんな宝石が好きなわけ?
1.エメラルド
2.ルビー
3.ダイヤモンド