晦−つきこもり
>六話目(前田良夫)
>AG3

へえ、そうなんだ。
うち見て、気ぃ使ったんじゃないの?
俺はダンゼン、洋風がいいけどなあ。
だって、かっこいいじゃん。
その家も、すごくかっこよかったらしいよ。
父親と母親と、中学生の娘の三人で暮らしてたんだって。

父親はバリバリ商社マンで、母親は生け花の先生っていう、マンガみたいな家族だったんだ。
ところが、ある日のことだよ。
娘のミチルって子の学校に、母親が突然やってきたんだ。
それで、ミチルにこういったんだって。

「パパが、交通事故で亡くなったわ」
ミチルは、そりゃビックリしたよ。
担任の先生に許可もらって、急いで帰ったんだ。
そのまま病院に行くのかと思ったら、母親は家に帰ろうとしてさ。

「病院には、おばあちゃんに行ってもらってるの。ママとミチルは、家でパパの会社や警察からの電話を待つように、いわれているのよ」
そういわれて、ミチルは納得したんだな。
それで、家で連絡を待ってたんだよ。

ところが、全然かかってこないんだよね。
場合が場合だから、ミチルたちも、あんまり話すことなくってさ。
家の中は、シーンと静まり返ってた。
母親は、ソファーに座ったまま、元気なくうつむいちゃってるし。

ミチルは、自分が悲しいのをガマンして、母親をなぐさめてやりたいって考えたんだ。
葉子ネエだったら、こんなときは、どうしてる?
1.側に行って、抱きしめる
2.温かいお茶を入れてあげる