晦−つきこもり
>七話目(前田和子)
>B18

「待ってください。いいんです、このままで」
自然に、涙が出る。
「……君は、優しいね。葉子ちゃんっていったっけ?」
「はい」
「あんまり会ったことはなかったよね。まあ、俺は君のこと知ってたけど」
「えっ……?」

「本家に近い子のことくらいわかるさ」
和弘さんは、私の頭を撫でた。
急に、気がゆるむ。
やだ、今ごろ涙が……。
泰明さん、良夫、和子おばさん……。
お参りに行く前は、元気にしていたのに。

良夫なんか、マジックでいたずらまでして。
泰明さんだって、さっきまで一緒に話していたのに……。
うつむいていると、床に落ちた懐中電灯が目に入った。
それを拾い、スイッチを入れる。

お堂の中が照らされ、たくさんのお札が浮かび上がった。
1.お札を見る
2.和弘を見る