晦−つきこもり
>七話目(前田和子)
>B19

……あそこにあるのは、赤い靴の子が書いた札だわ。
なにげなしに、近寄ってみる。
赤い靴の子は、生きていたのよね。
でも、こんな騒動をまき起こしたんじゃ……。
あれ?
このお札、裏に変な模様があるわ。

私は、懐中電灯でよく照らしてみた。
模様じゃない。
これは、名前?
そこには、女の子の名前が書いてあった。
そうか、この札は、裏に名前を書くようになっていたんだわ。
『華』
こんな名前だったんだ……。

私は、おばあちゃんの名前が書いてある札を探すことにした。
夜は長いもの。
一つ一つ、懐中電灯を照らしていく。
おばあちゃんの名前が書いてある札はなかった。
でも、そのかわりに、『華』と書かれたお札をもう一枚見つけた。

「葉子ちゃん、何してるの?」
和弘さんが、近付いて来ようとした。
何か隠すように、右手を背中にまわしている。
懐中電灯を向けると、そこから光が反射した。
銀色の……ナイフの刃!?

「ああ、ごめん、驚いた? このナイフ、泰明の胸に刺さっていたんだよ。

これを使った黒い影とやらの手がかりがないかと思って、調べていたんだ」
和弘さんが、ナイフを持った右手を出した。
1.驚かさないで
2.嘘よ、殺される!