晦−つきこもり
>七話目(前田和子)
>B20

「驚かさないでください……もう、犯人はいいんです」
犯人は、正美おばさん達だった。
明日になったら、それを警察にいわなきゃいけないんだろうか?
本当に、どうしてこんなことになってしまったんだろう。

「葉子ちゃん? どうして犯人はいいの?」
和弘さんが、私の目の前まで歩いてきた。
「……すみません。話は明日にしてください」
「明日か……明日なんてないよ」
「えっ?」

和弘さんは、いきなりナイフを振りかざした。
「正美達をかばってるつもりか?
さっきの話は、扉の外から聞かせてもらったよ。でも、正美は甘いよ。あの程度で、苦労したなんていってちゃあな」
……和弘さん、一体どうしたの?

「赤い靴の女の子の子供は、他にもいたんだよ。
それも、隠し子がな。
葉子ちゃん、赤い靴の子が、どうして前田家を死の間際まで恨んでいたかわかるかい?
嫁ぎたい一心で、前田家の男との間に、子をもうけていたんだよ。

でも、捨てられてしまったんだ。
それで、子供の身柄を隠して、前田家の親戚の家に嫁いだのさ。
身柄を隠された子供は……俺の母親だ」
なんてことなの?

おばあちゃんが小さい頃に起こした事件が、ここまで大きくなっていたなんて……!

「母さんは、産まれて間もなく、実家に預けられた。一度もばあさんと話すことができなかったそうだ。実は、俺と一緒に、ばあさんに会いに行ったことがあったんだがな。他人のフリをされたよ。
わかるか? 他人のフリだよ?」
和弘さんに、腕を掴まれる。

その反動で、懐中電灯を落としてしまった。
お堂の中が見えづらい。
「俺もね、この前田家の財産を狙っていたのさ。赤い靴の女の子……ばあさんが果たせなかったことを、成し遂げてやる。

まさか、こんなに早くチャンスがめぐってくるとは思わなかったよ。
正美の奴が、同じことを企んでいたとはな。
俺は、正美達の犯行を口外しないさ。
正美が前田家に養女に入ったら、金をせびることにするよ。

そのためには……わかるだろう?
すべてを知っている君がいると、まずいんだよ。
だから、口封じをさせてもらうよ。
ごめんな、葉子ちゃんは悪くないのにな……」

和弘さんが、ナイフを振りかざす音がした。
1.避ける
2.逃げ出す


◆2つ前の選択肢(2通りある)において「2.止めない」もしくは「2.和弘を見る」を選んでいる場合
1.避ける