晦−つきこもり
>七話目(前田和子)
>J18

何もいえなかった。
正視もできない。
私は、和弘さんが泰明さんの死体を運ぶ音を聞きながら、ただじっとしていた。
和弘さんは、すぐに戻ってきた。
「あ、懐中電灯があるね」
スイッチの音。

和弘さんが、懐中電灯で私を照らした。
まぶしい。
一瞬、何かが光った。
和弘さんは、何かを隠し持っている。
入り口に立つ彼の右手に、ちらりと銀色の刃が見えた。

「ああ、ごめん、驚いた? このナイフ、泰明の胸に刺さっていたんだよ。

これを使った黒い影とやらの手がかりがないかと思って、調べていたんだ」
和弘さんが、ナイフを持った右手を出した。
1.驚かさないで
2.嘘よ、殺される!