晦−つきこもり
>三話目(前田和子)
>A1

「じゃあ、私、そろそろ寝るから」
由香里姉さんが、いきなり席を立った。
「あら、もう寝るの? まだこれからなのに」
和子おばさんが引き止める。

「えーと、でも話し疲れちゃって……」
「そう、わかったわ。じゃあ、お布団を用意してあげる」
和子おばさんも立ち上がる。
……二人は、揃って客間を出ていった。
あ、困っちゃうな。

今度は和子おばさんの話が聞きたかったのに。
まあいいか。
すぐ戻ってきてくれるだろうし。
「しかし、由香里ちゃんの話はすごかったなあ」
哲夫おじさんが感心している。

「おじさんは何でも本気にするね。
ガキだなあ」
良夫ったら、あんなこといって。
もう、どっちがガキなんだか。
私達は、しばらく他愛もない会話をかわした。
……和子おばさんは、なかなか戻ってこない。

「良夫、ちょっと呼んできてよ」
良夫の腕をこづいた。
「やだよ、めんどくさい」
「そんなこといって。怪談してたから、怖くなっちゃったんじゃないの?」
「うるさいなあ」
良夫は赤くなっている。

「怖いことなんてないぜ。けど、呼びたいのは葉子ネエだろ?
自分でいってきなよ。……どうしてもっていうなら付き合ってやるけどな」
1.わかった、行こう
2.やーい、ほんとは怖いんでしょ
3.やっぱり戻るのを待とう