晦−つきこもり
>三話目(前田和子)
>A4

私は、良夫とその部屋に入った。
話を聞かなきゃいけない。
大好きな和子おばさんが、由香里姉さんがいったようなことをしたなんて。
とてもじゃないけど信じられない。

和子おばさんは、ふうっと長い息をはき、扉に鍵をかけた。
「葉子ちゃん、何でここに来たの?
あなたには知られたくなったのに」
……え?

「葉子ネエ、由香里ネエが話したことはみんな本当なんだよ。この家には、守り神が必要なんだ」
よ、良夫?
二人の雰囲気がおかしい。
一体何だっていうの?

「葉子、なんで来たの? さっきの話は忠告のつもりだったのに」
由香里姉さんが近寄ってきた。

「葉子に近寄るなよ。お前、さっき、俺達に『印』をつけかえすっていったろ? 人間の心臓を使うとか。
まさか、葉子を殺すつもりじゃないだろうな?」
良夫、何てこというの?
それに、人のこと呼び捨てにして……。

怖い、いつもの良夫じゃない。
私は思わず退いた。
「そんなつもりはなかったけど……そうか、あんた達、どうせ葉子も殺す気でしょ。秘密を知られたんだから。だったら、私がその心臓を使ってもいいかもね」
由香里姉さん!?
どうしてそんなこというの?

冗談じゃないわ。
「嫌あね、葉子ちゃんを殺すわけがないでしょ。私達、葉子ちゃんのことが好きだもの」
「葉子、早くこっちに来いよ。そっちは危ないよ」
由香里姉さんが、良夫をにらんだ。

「よくいうわね。葉子、いい?
心臓を使わせてもらうなんて、葉子が殺されたらって話よ。最悪の場合、それしかないってことなのよ。私は、わざわざ葉子を殺したりしない。だからこっちにおいで。
二人でここを逃げよう!」

ひどい、みんな信じられないことをいっている。
……一体、どこへ行けばいいの?
1.和子おばさんの所へ
2.良夫の所へ
3.由香里姉さんの所へ
4.一人で隅の方へ