晦−つきこもり
>三話目(前田和子)
>I3
「良夫、あの部屋は?」
「どうでもいいじゃん。もう戻ろうよ」
良夫は、私の腕をひっぱった。
「痛いでしょ、やめてよ」
「早く戻ろうってば」
「何よ、何か隠してるの?」
私は、良夫の手を振り払って、その部屋まで進んだ。
扉から中を覗く。
……あ!
和子おばさんと由香里姉さんだわ。
「……だからね、由香ちゃん。どうしてあんな話をしたの?」
何だか、深刻そうな話をしている。
「だって、本当のことじゃない。
和子おばさんと良夫が、私に印をつけたのよ」
印?
もしかして、さっきの話のこと?
「良夫が虫や小鳥を殺すのを見たわ。それだけじゃない。私を人柱にしようとして、犬の心臓をこの頬になすりつけたのよね」
由香里姉さんは、頬を押さえて肩をふるわせている。
ええっ、さっきの話って、この家のことだったの?
「かあちゃん!!」
突然、良夫が大声をあげた。
「葉子ネエが聞いちゃったよ。
部屋に入っていい?」
「良夫! 何でここに来たの?
……とにかく入りなさい」
1.部屋に入る
2.助けを呼ぶ