学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>Y13

そう。
彼は、誘われるようにその個室の前に立ったんだ。
そして、ノブに手をかけた。
ノブは妙に重かったよ。
でも力を込めたら、重かったのは最初だけで、ドアは簡単に開いたよ。
そして……。

ドアが開いたけれど、中には何にもなかった。
二階から続いていた血の跡は、その個室の中でプッツリと途切れていたのさ。
中は空っぽなのにね。
その時、彼は頬に冷たいものを感じたんだ。

雨……?
雨なんか降るわけない。
ここは、旧校舎の中だ。
不審に思って上を見上げると…………。
いたんだよ。

一緒に補習を受けていた五人のクラスメートが、天井に血だらけになって張りついていたのさ。
そして、その中の一人にしがみつくようにして、血まみれのセーラー服をきた、おかっぱ頭の女がこっちを睨んでいたんだ。
顔は、わからなかった。

だって、白い能面のようなものをかぶっていたんだからね。
表情さえ読み取れないんだ。
天井に貼りついた五人は、体の所々を五寸釘で打ち付けられていたよ。
そして、その死体に身を預けるようにして、仮面の女はしがみついているんだよ。

彼は、言葉を失った。
叫ぶこともできず、視界を占領する怪しい世界に釘付けになったんだ。
それが、彼の最後の記憶になった。
次の瞬間には、天井をクモのようにカサカサとうごめく仮面の女は、彼に襲いかかっていたからね。

……その時、彼は思ったんだ。

あの三人を運んでいた黒くて小さな生き物はもしかして、例のドクロの染みだったんじゃないか……。
ヤツらはこの女たちに、餌を運んでやっているんじゃないかってね。

これから死んでしまう彼にとって、そんなことはどうでもいいことなのにね。
死ぬ間際なんて、結構くだらないことを考えるものかもしれないね。

……それで、その六人がどうなったかって?
……見つからなかったんだよ。
次の日、彼らを補習に残したまま帰った先生も、あとを頼まれた先生も、問題が大きくなる前に旧校舎を調べたんだ。

けれど、彼らの死体どころか、一滴の血の跡さえも見つからなかったのさ。
そして、その二人の先生はね、彼らをきちんと帰したということで口裏を合わしたのさ。
ひどいもんだよね。

それで、彼らは行方不明になったのさ。
結局、その後六人の姿を見たものは、誰もいない。
ただ、いなくなった六人が学校で補習を受けていたことは、クラスメートたちは知っていた。

そして、その後すぐに姿を消したから、変な噂が流れるようになったんだよね。
旧校舎の三階にある女子トイレから、変な呻き声が聞こえてくるとか、そこで、いなくなった彼らの姿を見たとか、変な噂もいろいろと広まったしね。
それで、あれは花子さんの呪いだという話になったんだ。

花子さんが、六人を連れていったんだとね。
あの六人が、違う世界に迷い込んでしまったのか、それとも本当に花子さんの呪いだったのか、それはわからないことさ。

……これで、旧校舎にまつわる話は終わりだよ。
もっとも、六人が殺されるところなんて誰も見たわけじゃないから、信憑性はとても低いよね。
でも、僕はどうしてもあれが嘘だとは思えないんだ。

……どうだい?
今から、三階の女子トイレに行って、花子さんを呼び出してみようよ。
坂上君。
君は、さっき行くっていったよね。
それとも、僕の話を聞いて気持ちが変わったかな?

どうする?
行くよね?
1.三階の女子トイレに行く
2.やっぱり行かない


◆3番目の選択肢で「2.ない」を選んでいる場合
2.やっぱり行かない


◆一話目〜五話目で細田以外が全員消えている場合
1.三階の女子トイレに行く
2.やっぱり行かない