学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>AK8

廊下に学生カバンが落ちていたんだ。
誰かが拾い上げ、そしていったよ。
「これは、あの人のカバンだわ」
……ってね。
そう……、七人目のカバンだったんだよ。

悪口を聞かれてしまったんだろうか。
六人は顔を見合わせた。
まずいと思ったんだろうね。
廊下に顔を出してみると、サッと誰かが階段の踊り場に隠れるじゃないか。

七人目のヤツだ。
さんざんなことをいわれていたから教室に入れなくなったんだろう。
謝るつもりで、みんなは出ていったよ。

踊り場には、もう誰もいなかった。
だけど、階段の上の方から物音がしたんだ。
階段を上がってしまったんだ。
みんなはそう思った。

そして、続いて上がっていこうとしたときだよ。
ボタリと何かが足元に落ちてきたんだ。
四十五センチほどの長さの、筒のような物体がね。
一人が拾い上げようとして、悲鳴をあげた。

それは、人間の腕だったんだ。
ひじのところから、ぶっつりと切り落とされている。
女の子たちも悲鳴をあげた。
でも、冷静な一人が指さしたんだ。
「作りものじゃないか?」
……ってね。

いわれてみれば、切断面に一滴も血がついていなかったんだ。
色も白っぽかったしね。
「あいつだな!」
こんなことをするのは、一人しかいない。
七人目のあいつさ。

みんなは怒って、階段を上り始めた。
するとまた何かが落ちて来たんだ。
見ると、今度はもう片方の腕さ。
もちろん、もうこんなことじゃ驚かない。

「いい加減にしろ!」
「もう、わかってるんだぞ!」
口々にいいながら、階段を上がっていったんだ。

三階に上がってみると、トイレの明かりがついていたんだ。
逃げ込んで隠れたつもりなんだろうか。
電気がついていちゃ、すぐバレるに決まっているのにね。
みんなはトイレに向かって歩き始めた。

すると、トイレの中で何かが倒れたんだ。
それは廊下に倒れ込んで、みんなの前に姿をさらした。
ひざから下の足だったよ。
みんなクスクス笑った。

隠れているつもりなら、とんでもない間抜けなやり方だと思ってね。
「もうやめろよ。みんな、わかっているんだから……」
いいながらトイレをのぞいた一人の声が、途中で途切れた。
トイレの中には、誰もいなかったんだ。

白々とした明かりに照らされて転がっているもう一本の足以外にはね。
「くすくす……」
そのとき、背後で笑い声が聞こえた。

振り向くと、オカッパ頭の女が立っていたのさ。
笑い声は、彼女のものだったんだろうか。
それはわからなかった。
だって、彼女の顔は真っ白なお面におおわれていたんだからね。

でも、少なくとも仮面からのぞいている目は笑っていなかった。
そして彼女は、彼を連れていたんだ。
七人目の彼をね。
それを見て、誰かが甲高い悲鳴をあげた。

彼の手足は、関節から先がなくなっていた。
女はニヤリと口もとをゆがめた。
そして、固く目を閉じた彼の首を引きちぎったんだ。
……飛び散るはずだった血は、ただの一滴も出なかった。
まるでろう細工のようにね。

彼の首を落とし、女はトイレの中に入ってきた。
次は自分たちの番だ!
そうわかっているのに、体が動かないんだ。
六人にできたのは、近づいてくる女の仮面を見つめることだけだったのさ。

……それで、その六人がどうなったかって?
……見つからなかったんだよ。
次の日、彼らを補習に残したまま帰った先生も、あとを頼まれた先生も、問題が大きくなる前に旧校舎を調べたんだ。

けれど、彼らの死体どころか、一滴の血の跡さえも見つからなかったのさ。
そして、その二人の先生はね、彼らをきちんと帰したということで口裏を合わしたのさ。
ひどいもんだよね。

それで、彼らは行方不明になったのさ。
結局、その後六人の姿を見たものは、誰もいない。
ただ、いなくなった六人が学校で補習を受けていたことは、クラスメートたちは知っていた。

そして、その後すぐに姿を消したから、変な噂が流れるようになったんだよね。
旧校舎の三階にある女子トイレから、変な呻き声が聞こえてくるとか、そこで、いなくなった彼らの姿を見たとか、変な噂もいろいろと広まったしね。
それで、あれは花子さんの呪いだという話になったんだ。

花子さんが、六人を連れていったんだとね。
あの六人が、違う世界に迷い込んでしまったのか、それとも本当に花子さんの呪いだったのか、それはわからないことさ。

でも、かわいそうなのは七人目だよね。
他の六人と違って、旧校舎にいたってことを知られていないから、別扱いでさ。
ちょっと不良だったから、家出まで疑われたんだ。

踏んだり蹴ったりって、このことだよね。
だけど……どうして彼は、そんなに遅い時間に戻ってきたりしたんだろう?
補習をさぼるなら、さっさと帰ってしまえばいいのにさ。

……もしかしたら、彼は初めから来ていたのかもしれないね。
そして、花子さんに捕まったんだ。
みんなが補習を受けている頭の上で、花子さんは彼を切り刻んでいたのかも……。

……これで、旧校舎にまつわる話は終わりだよ。
もっとも、六人が殺されるところなんて誰も見たわけじゃないから、信憑性はとても低いよね。
でも、僕はどうしてもあれが嘘だとは思えないんだ。

……どうだい?
今から、三階の女子トイレに行って、花子さんを呼び出してみようよ。
坂上君。
君は、さっき行くっていったよね。
それとも、僕の話を聞いて気持ちが変わったかな?

どうする?
行くよね?
1.三階の女子トイレに行く
2.やっぱり行かない


◆3番目の選択肢で「2.ない」を選んでいる場合
2.やっぱり行かない


◆一話目〜五話目で細田以外が全員消えている場合
1.三階の女子トイレに行く
2.やっぱり行かない