学校であった怖い話
>四話目(新堂誠)
>K5

彼女は、自分の肖像画を描きまくっていたのさ。
それはほとんど、成長記録といってもいいほどだったよ。
多分、物心ついたころから、描いていたんだろうな。
よく、自分の幼いころからの写真をアルバムに取っておくじゃないか。

彼女の場合は、写真ではなく絵だったんだろうな。
それこそ、並みの枚数じゃなかったよ。
小さなころから描きためた自分の絵を、嬉しそうに俺に見せてくれた。
ある意味では、薄気味悪い趣味かもしれないよな。

俺に、彼女の自画像を見せるときは、本当に嬉しそうだったもんな。
あれは、俺に見せていたんじゃないのかもしれない。
自分で見たいがために、俺をだしに使っていたのかもしれないな。
それこそうっとりした表情だった。
悦に浸ってたよ。
一言で言えば、ナルシストだったんだよ。

自分の顔を鏡に映し出して、うっとりと魅入ってしまう。
そういう奴っているじゃないか。
たいしてかわいくもかっこよくもないのに、ずーっと鏡の前から動かない奴。
彼女は、その類いさ。
鏡が、絵に変わっただけのことさ。

そうだ、はっきり言える。
彼女は、俺に絵を見せたかったんじゃない。
自分で見惚れたいがために、自画像を描いて、それを見ていたんだ。
別に、俺がいようといなかろうと関係なかったのさ。

彼女は、俺に彼女の描いた自分の絵しか見せようとはしなかったもんな。
そう考えると怖くないか?
彼女は、絵が好きだったんじゃない。
あくまで、自分が好きだったのさ。

どんな絵を描こうとも、それはよりよく自分を描くための練習でしかない。
そして、より美しく素晴らしく自分を描こうとしてたのさ。
だからこそ、彼女は死んだあとも、あの絵に執着したんじゃないか?

俺は、そう思うんだ。
そうさ、絶対にそうだ。
……すまんな、なんか興奮しちまった。
……俺も、実際は怖いのかもしれない。
なんせ、死ぬと噂されているあの絵を見ちまったからな。

それは、お前だって同じことだろう坂上?
そしてここにいる残りの五人もな。
……俺が中学生になったら、彼女の家にいかなくなったということは、さっき話したろう?
実は、理由があるのさ。
俺が彼女の家にいかなくなった理由。

いや、彼女が俺を誘わなくなった理由という言い方のほうが正しいな。
それは何だと思う?
1.彼女に嫌われることをした
2.彼女の秘密を知ってしまった
3.彼女はほかのことに興味を持った