学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>B27

僕は、六人と答えた。
彼女の仮面を支えていた指が、ゆっくりと離れていった。
彼女は、仮面を外さなかった。
なぜか僕には、仮面の奥の顔が、とても寂しそうに思えてならなかった。
彼女は、ゆっくりと話し始めた。

……そう。
話では六人と伝わっているのね。
あの話は、現実にあった話なの。
補習を受けていた生徒たちが、先生に忘れられてしまった話。
でも、補習を受けていた生徒は七人いたのよ。

六人じゃなかったの。
そして、その六人は、誰も犠牲にならなかった。
花子さんに殺されたなんて嘘。
本当に起こったのは、もっと残酷な話。
その話をしてあげる。

……残っていた七人は、すぐに先生が自分たちが補習を受けていることを忘れたのに気づいたの。
それでね、無性に腹が立ってしまったの。
けれど、その怒りをどこにぶつけていいのかわからなかった。

だから、六人はよってたかって一人をいじめたの。
自分たちが忘れられた腹いせにね……。
その子は何も悪くなかったのにね。
いじめられたのは女の子だった。

彼女は、旧校舎の三階にある女子トイレに閉じ込められたわ。
女子トイレの奥から二番目の個室に。
そして、外からつっかえ棒をされて出られないようにされたの。
六人は、女の子を閉じ込めると気が晴れたのか、補習を投げ出して家路についた。

次の日、女の子は助け出されたわ。
でもね、その六人はいじめに快感を覚えてしまったの。
それからは、彼女のことを何かあるたびにいじめるようになってしまったのね。
彼女は、耐え切れなかった。

……それで、彼女は自殺しちゃったの。
あの補習の日、閉じ込められた女子トイレで首をつってね。
それが、私。
……ああ。
今、岩下明美が自殺した。

ふふふ……、いい気味。
自分の部屋で、自分の首をカッターで切っちゃった。
……馬鹿な女ね。
いもしない悪霊に悩まされて自殺しちゃったんだから。
……あら、もしかしたら、私が悪霊なのかも。

うふふ……、でもね、私、復しゅうしないと成仏できないの。
……もう、わかった?
あなたに怖い話をしてくれた六人は、私を自殺に追い込んだ六人の子供たちなの。
私が自殺した時、お父さんもお母さんもとても悲しんだわ。

けれど、彼らも彼らの両親も、何もしてくれなかった。
悪いのは自分の子供じゃないって……。
今ね、あのときの六人は人並みに親になっているから。

その子供たちが、そろってこの学校に来るようになったのは、何も偶然じゃないのよ。
運命なの。
最初から、私に殺される運命だったの。
あなたは、たまたまその案内人を務めただけなの。

……六人とも死んじゃった。
きっと、あいつらの親……私を死においやった六人は悲しむでしょう。
私のお父さんやお母さんが悲しんだときと同じように。

坂上君。
私のしたことは、ひどいことだと思う?
彼らに責任はなかったと思う?


※これまでの選択によって、以降の展開(仮面の女の素顔)は変化する
◆仮面に囲まれる
◆朝日の中の微笑み
◆青い蝶の群れ
◆ロウのように溶ける
◆暗黒の小宇宙