晦−つきこもり
>一話目(山崎哲夫)
>A6

そうか。
みんなそう考えるのかな。
いや、その大学生達も、そうしたのさ。
その不気味な人たちに、なるべく関わりたくなかったんだろうな。

谷村君達は、無言のままその人たちを追い抜いた。
できるだけその人たちのことを見ないようにしてな。
谷村君達は、ものすごく緊張したよ。
その人たちに、なにかされるんじゃないのかと思ってな。
緊張で足がガタガタと震えた。

横を通るとき、その人たちを取り巻く空気がやけに冷たく感じたんだ。
もちろん、気のせいだとは思うけどな。
谷村君達の心配をよそに、何事もなくその人たちは、霧の中に消えていった。
今まで追い抜いたときと、何ら変わりなくな。

谷村君達は、ほっと一安心したよ。
でも、みんなは思ったんだ。
またあの人たちは、自分の前に現れるって。
そして、今は無事に追い抜くことができたけど、今度追い抜くときは何かが起きるかもしれないって。

谷村君達は、それから一言も口をきかずに登っていった。
みんな、緊張と不安で、今にも押しつぶされそうになっていたんだ。
そして、みんなの予感は当たった……。
またあの人たちが、自分たちの前に現れたのさ。

もう、みんな恐怖で、今にも泣き出しそうだった。
自分たちの前に、何度も現れる人たち。
そして、自分たちが追い抜いていっても、全く無反応な人たち。
別に、なにをしてくるわけでもない。
ただ自分たちの前に現れるだけなんだ。

でも、それが谷村君達にとっては、恐ろしくてたまらなかった。
それから、谷村君達は、無限の時を過ごしているような錯覚に陥った。
そして、この時間は永遠に続くのではないかと思えたんだ。
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もう何度あの人たちに追い抜かれたことだろう。

そろそろ頂上についてもいい頃だ。
でも、谷村君達の前には、真っ白な霧と、それに隠れているであろう坂道が続いているだけだった……。
谷村君達は、つかれた足を引きずりながら、登っていった。

(普段より疲れがひどいような気がするのは、この霧のせいなのか……。それとも、いつもより、緊張した気持ちで登っているからなのかな……)
谷村君は、そう考えながら、登っていったんだ。

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1.それでどうなったの?
2.哲夫おじさんの話、変だわ


◆最初の選択肢で「2.部活動」か「3.ショッピング」を選んでいる場合
1.それでどうなったの?