晦−つきこもり
>三話目(前田和子)
>F9

そう……。
まあいいわ、私は、それまでそんなことはなかったんだけどね。
この夢の後で、同じ夢を続けて見るようになったの。
……病院の夢よ。
夢の中で犬になった私は、何度も病院の扉をくぐろうとしたんだけど。

その度に追い払われたのよ。
私は、病院を外から眺めることしかできなかったの。
それから、見るのはいつも、病院の夢。

大きな病院を眺める夢……。
女の子は無事だったのかしら。
そう思いながら、毎日外から眺める夢を見たの。
……葉子ちゃん、もうわかるわよね。

その病院って、私が最初にボールを見つけた所なの。
私、現実で何度か病院を訪ねてみたのよ。
夢の中の女の子を捜したんだけど、だめだったわ。
そりゃそうよね。
病院は広いし。

患者はたくさんいるし。
私、その子の名前もわからなかったんだから。
しょうがないから、ボールがある、植木の所に行ったのよ。
そうしたら……何か、動物の毛のようなものが、足元に触れたような気がしたの。

よく目をこらしたら……犬がいたわ。
目をつぶって、寝そべっていたのよ。
何だか、ぼうっと光りながらね。
犬は私に気付いて、こっちを見たの。

死んだ魚のような目をしていたわ。
もう、びっくりしてしまって……。
すぐに駆けだしたの。
追いかけてくるかと思ったら、そんな気配はなかったわね。
私、止まったわよ。

振り向くべきか、このまま駆けていくべきか……考えたんだけど。
ずっと迷ってはいられなかったの。
空気が凍りついていたっていうのかしら。

ぐずぐずしていると、何が起こるかわからないような感じがしたのよ。
葉子ちゃんだったら、こんな時どうするかしら?
1.振り向く
2.逃げだす


◆5番目の選択肢で「1.図書館に行った」を選択しており、この選択に時間がかかった(約5秒以上)場合
1.振り向く
2.逃げだす