晦−つきこもり
>四話目(前田和子)
>A1

◆1回目

「泰明さん、庭に行きませんか」
私は、泰明さんを庭に誘った。
ちょっと、デート気分を味わってしまおう。
静かな庭で、二人きりのひととき……。
「おや、葉子ちゃん」
……え?
何で哲夫おじさんがいるわけ?

「いやあ、宝探しなんて聞くと、じっとしてはいられなくてね。とりあえず外を調べていたんだよ。
よかったら、おじさんも協力……あっ、葉子ちゃん!」
冗談じゃないわ。
邪魔されてなるもんですか。

どうしよう、どこに行こうか?
1.台所
2.寝室


◆2回目

「おお、葉子ちゃん」
哲夫おじさんたら、まだいるわ。
「なになに、協力してほしいのか……
あっ、葉子ちゃん!」
庭は駄目だわ。

「葉子ちゃん、いいのかい? 冷たくしちゃって」
「いいんです」
とにかく邪魔されたくないの。
うーん、今度はどこに行こうかな。
1.台所
2.寝室


◆3回目

「きゃーーーーっ!!」
庭に、哲夫おじさんが倒れていた。
「どうした哲夫!!」
泰明さんが抱きかかえる。
哲夫おじさんは、頭から血を流していた。

「この石に、血の跡があるぞ……。
哲夫のやつ、ここに頭をうちつけたんじゃないか?」
「こ……殺されたとか」
「葉子ちゃん、物騒なことをいわないでくれよ。
転んだとか、そういうことだろ。

救急車を呼ぼう。まだ死んじゃいない」
「どうしてわかるの?」
「心臓の音がしてるからね」
泰明さんは、哲夫おじさんの胸に耳を押し付けた。
「うん、やっぱり生きている。早く連絡しよう」
どうしよう。

私が哲夫おじさんに冷たくしなければ、こんなことには……。
「葉子ちゃん、泣くなよ」
泰明さんが、私の肩を叩いた。
「哲夫は俺がみてるから。みんなに伝えてくれないか」
「はい」
私は、急いで和子おばさん達がいる客間に向かった。

「大変です! 哲夫おじさんが……!!」
事情を説明し、すぐに救急車を呼んだ。
「哲夫さんの様子を見てきますわ!」
正美おばさんが走っていく。
そうか、正美おばさん、看護婦だもん。

よかった、まかせておけば安心よね。
私達は、正美おばさんの後について行った。
……庭に出ると、泰明さんが駆け寄ってきた。
「救急車、呼んだの?」
正美おばさんが、哲夫おじさんの具合を見る。

「あのさ、哲夫のやつ、気を失ってただけだったんだよ。やっぱり転んで頭を打ったらしい。人騒がせだよな、ははっ」
泰明さんが苦笑いをしていると、地面に寝そべっていた哲夫おじさんが、むくりと起きあがった。
「いやあ、どうもすみません」
……なあんだ。

「哲夫さん、大丈夫ですの?」
正美おばさんが駆け寄る。
「まあ、こぶができた程度ですよ。
救急車は断らないとな」
「でも……頭って、大事ですわよ。
病院に行った方がいいんじゃありません?」

「がっはっは! こんなの慣れっこですよ。自分は、いろんな所で冒険していますから。怪我なんてしょっちゅうです。たいしたことありませんよ。がはははは……」
……あきれた。

「さあ、はやく部屋に戻ろうよ。
怖い話の続きをしよう」
泰明さんが、みんなをうながした。
よかった、大変なことにならなくて。
……あれ、ちょっと待ってよ。
哲夫おじさん、頭から血を流していたわよね。

そばにある石に、血がついていたはずだけど……。
そんな石、ここにはないわ。
泰明さんが拭き取ったのかしら。
あっ、違う。
哲夫おじさんが倒れていたのって、もっと向こうだわ。
そうよ、あっちにある石。
あの辺よ。

泰明さんが、哲夫おじさんを動かしたの?
どういうことなのかな?
……あっ。
そういえばあの石、見覚えがある感じ。
昔あそこで、何かしたことがあるような。

さっきまでは、哲夫おじさんのことで夢中になってて気付かなかったけど……。
1.確かめる
2.気にしない