晦−つきこもり
>五話目(真田泰明)
>E2
そう、海の生物に関する番組だった。
しかし、その制作中に、不気味な出来事があったんだ。
番組のメインは小笠原諸島だった。
小笠原諸島は、世界でも有数のダイビングポイントだ。
交通の便の悪さが幸いしてか、貴重な自然が保護されている。
そして、恐ろしい事件がとても似つかわしくない所でもあったんだ。
まあ、こんな所をリゾートにしようとしている奴がいたら、よほど金に目がくらんだ奴だと思うよ。
撮影には海洋生物学者と、制作スタッフ二十名、そして十二人のダイバーが同行した。
うちわけはカメラマン三人に、サポート九人だ。
小笠原諸島には竹芝桟橋から週一便、船が出ている。
撮影は一ヶ月の予定だった。
退屈な船の上で、退屈な二日間が過ぎていく。
みんなは、だらけ出してきた。
しかしそのだらけたスタッフの目に、そんな気持ちを吹き飛ばす程の自然が、目に入ってきたんだ。
「日本とは思えませんね………」
スタッフは、言葉少なにその自然を讃えた。
そして、目的地が近づいてきたころ、少しはなれたところで、クジラが出迎えてくれる。
「幸先いいな」
俺はその時、そう呟いたんだ。
そして三週間は順調に過ぎていった。
新種の発見、世界で初めてのカメラにおさめられた生物など、俺達に幸運の女神は微笑み続けた。
しかし、幸運の女神の力も、そこまでだったんだ。
いつもと同じ様に、その日は始まった。
この日のターゲットはクジラだ。
クジラが現れるポイントに、スタッフは待機した。
水中に一組の撮影班を潜ませている。
水中のスタッフは、クジラの出現を待った。
ところで葉子ちゃん、水中でのスタッフ同士の連絡って、どうやって取るか知っているかい?
1.筆談をする
2.普通に話す
3.わからない