晦−つきこもり
>五話目(前田和子)
>C14

「ぶぱきゅるはおわーーーっ!!」
私は、自分でもよくわからない奇声をあげ、部屋から出ようとした。
「きゃあっ、葉子ちゃん! いけない! 変な霊にでもとり憑かれたの!?」

「ぶぱきゅるはおわーーーっ!!」
再び奇声をあげる。
これは霊の仕業じゃない。
現実逃避よ!
「ぶぱきゅるはおわーーーっ!!」
「誰か! 誰か葉子ちゃんを
止めて!!」
和子おばさんが叫ぶ。

「葉子ちゃん、しっかりして!!」
和子おばさんは私を捕まえ、平手うちをくれた。
一つ、二つ、三つ……。
い、痛いっ!
「い、痛い、おばさん、痛いっ!!」

「しっかりしなさい!
葉子ちゃん!!」
「い、痛いーっ、すみませんっ」
「しっかりして!!」
「もうだいじょう……ぶはっ」
顔や背中を叩かれて、息がつまってしまった。

「あ……ごめんなさい。ちょっとやりすぎた?」
か、和子おばさん……。
「すみません。ちょっと取り乱してしまいました」
「……いいのよ。じゃあ、率直な質問をしましょうか」
「ま、まだ風間さんと話すんですか?」

「ふふ、一番大事なことを聞くわ。風間さんは、私のことを好きなのかしら?」
うーん、今度彼はどんなことをいうやら。

(……ああ、和子。かわいいよ。
わたしは、そんな君が大好きさ。
そうだ、こんどデートしようか?
場所は……そう、海がいい。なんでかって?

決まっているじゃないか。海は、男のロマンだからさ。わかったかい?)
「葉子ちゃん、風間さんは何ていってるの?」
和子おばさん、不安そうな表情をしてる。
へたなことはいえないわ。

風間さんは、和子おばさんのことが好きかどうか。
これが最後の質問ね。
生霊って、あまり長く体を離れていると、生命にかかわるって聞いたことがあるし。

風間さんの健康の為にも、降霊は早めに切りあげた方がいいのかもしれない。
さあ、和子おばさんに何ていおう?
1.他の質問もしよう
2.風間さんは和子おばさんが大好き
3.海は男のロマンだ
4.風間さんは私のものよ