晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2I3

俺達は左の奥の部屋に入った。
ここは、主の部屋のようだ。
ベッドとタンス、そして立派な机がある。
俺は部屋の中程まで進んだ。
内装は和洋折衷といった感じで、洋風の家具の中に、日本の鎧や日本刀が飾られている。
(元大名の華族といってたな………)

あらためて俺は、この洋館の持ち主について考えた。
(そういえば、この屋敷の縁を聞いてないな………、明日、調べてみるか………)
俺は漠然とそう思った。
「何だ、これは………」
花田さんの声がする。
彼は壁にある掛け軸を見ているようだ。

「幽霊だよ、これ………。しかし、趣味悪いな………」
彼はそういいながらも、しげしげとその絵を見ていた。
ここからはよく見えないが、幽霊が描かれているらしい。
河口君と吉川は鎧や日本刀を見ている。
そして日本刀を手に取ると、鞘から抜いた。

「おい、これ本物だよ………」
窓を覆うツタの隙間から入る月の光が、刀の刃に当たり、鈍い光を放っている。
(やばいな、銃刀法違反だよ………)
俺は苦笑した。
そして花田さんを探す。

花田さんは、掛け軸のところを離れ、家具の引き出しを開いている。
「これ、拳銃じゃないか………、本物だよ、これは………」
無口な花田さんは興奮して、そう叫んだ。
「泰明君、ちょっと不味いんじゃあないか………」
花田さんは苦笑しながら呟く。

俺は当惑した。
彼はその拳銃が偽物だという証拠を探すかのように、いじりまわしている。
その時、突然、拳銃の発射音がした。
花田さんは呆然としている。
みんなも動きを止め、花田さんの方を見た。

そしてやっと気を取り戻したのか、口を開く。
「た、弾が入っていたのか………」
彼のその言葉は、やや怯えているようだ。
部屋の中には、硝煙の臭いがたちこめている。

それから花田さんは、まるで自分の発砲を正当化するかのように、いじり出す。
拳銃を調べだし、弾倉を開けた。
「これ銀の弾だよ………、ドラキュラでも、倒すつもりだったのか………」
彼はかなり興奮しているようだった。

みんなも、花田さんの言葉に耳を傾けている。
俺は花田さんのところに歩み寄った。
「………本物みたいですね………」
花田さんのところに行き、その弾を見て呟いた。

「取り敢えず、ホテルに戻ってから考えましょう」
そして俺がそういうと、花田さんは黙って頷き、引き出しにしまった。
拳銃をしまうと、彼は落ち着きがない感じで部屋を歩き出す。
1.他の引き出しを調べる
2.掛け軸のところにいく
3.日本刀が気になる