晦−つきこもり
>二話目(真田泰明)
>A2

そんなことを私が考えていると、泰明さんはその二人が忘れたという出来事を語り始めた………。

あれはちょうど二十年前の夏だ。
俺と哲夫、正美は、両親に連れられ、ここに遊びに来ていた。
正美が六歳、哲夫が八歳、俺が十三のときだ。

俺達三人は両親がいる堅苦しいこの家を抜けだし、野山に遊びに行った。
「哲夫、山まで遊びに行くぞ!」
俺は渋る哲夫にそう叫んだんだ。

「哲夫くん、そんなんじゃ、女の子にもてないよ」
この家を抜け出そうといい出した正美だった。
そしてお前は尻をけっ飛ばすように哲夫に、そう言葉を放ったんだ。
「だって正美ちゃん、そんなことしたらお母様が………」
哲夫は俯きながら呟いた。

「もう、哲夫くんたら、マザコンだから嫌いよ。ねえ、泰明兄ちゃん、二人だけで行きましょ」
そういって正美は、俺の手を取り、スタスタ歩き出した。
「おい、哲夫! 早く来いよ」
哲夫は、渋々という感じで付いて来た。

俺達は家を抜け出すと、全力で家を離れた。
そして家が見えないところまで来ると、やっと足を止めたんだ。
「泰明兄ちゃん、どこ行こうか」

「う〜ん、とりあえず、山の方にでも行ってみるか」
正美を先頭に俺達は山に向かったんだ。
哲夫はまだ時々後ろを振り返り、両親のことを気にしている感じだ。
俺はそんな哲夫を見て見ぬ振りをして、正美に続いた。

そして俺達が山のふもと辺りに着いたときだ。
「ねえ、泰明兄ちゃん、あそこにお城が見えるよ」
正美が指さして、叫んだ。
「泰明兄ちゃん、あそこに行ってみようよ」
「そうだな、行こうか」
俺達三人はまた、そのお城に向かって歩き出した。

「ちょっと待ってくれませんか、泰明兄さん。俺、そんなに弱虫だったのでありますか?」
哲夫おじさんが、少し緊張した感じで口を挟んだ。
「まあ、お前が今みたいになったのは、思えばこの事件がきっかけだったのかもしれないな。当時のお前はガリ勉でモヤシみたいな奴だった」

「泰明さん」
今度は正美おばさんが口を挟んだ。
「私、そんなお転婆だったんですの?」

「そうだな、この出来事の後、お前としばらく会わなかったけど、次にあったときは、今のように堅苦しい女になっていたからな。女の子ってアッという間に変わるよ、ははっ」

泰明さんは正美おばさんを見ると、おもしろそうに笑った。
私も驚いた。
1.(哲夫おじさんがガリ勉だなんて、意外だわ、ふふっ)
2.(あの正美おばさんが、お転婆なんて、ふふっ)


◆最初の選択肢で「2.(嫌な予感がするわ、話を聞かない方がいいんじゃあ)」を選んでいる場合
2.(あの正美おばさんが、お転婆なんて、ふふっ)