学校であった怖い話
>三話目(岩下明美)
>B9

マッチが絵の上に落ちたとき、みんなは当然絵がすぐ燃えてしまうと思ったわ。
だけど、そうはならなかった。
炎が絵に触れる瞬間、フッと消えてしまったのよ。
風も吹いていないのにと、見ていた人たちは不思議に思ったわ。
でも、とにかくもう一度、火のついたマッチを放ってみた。

すると、また消えてしまうのよ。
先生は、今度は丁寧にマッチをすったわ。
ちゃんと火がついたのを確認して、風に消されないように片手でおおった。
そして、そーっと絵に近づけたの。
でも……それでも火は消えたわ。

絵に触れる手前でね。
どう見ても、絵が何らかの方法で消しているとしか思えなかった。
みんなは気味が悪くなって、これ以上はやめようってことになったの。
でも、放っとくわけにもいかないわよね。

結局、お坊さんを呼んで供養することになったわ。
……でも、だめだった。
彼女の霊の執着心のほうが強かったのかしら。
どんなに供養しても、あの絵は美術室に舞い戻ってくるのよ。

それで、もうどうすることもできなくなって、放っておくことになったわ。
別に、害があるというわけではないしね。
とりあえず、彼女が絵を仕上げることで満足をするのならば、それを温かく見守ろうということになったの。

絵は、毎日少しずつ仕上がっていったわ。
ほとんど、見分けがつかない程度で。
そして、絵は完成した。
美しい、清水さんの自画像が出来上がったの。
そして、絵が完成すると同時に、今度は美術室から消えてなくなったのよ。

なくなったらなくなったで、気味の悪いものよね。
あれほど怖がっていたくせに、今度は絵を捜し始めたの。
絵は、どこにあったと思う?
1.彼女の家
2.部室
3.彼女のお墓
4.見当もつかない