学校であった怖い話
>七話目(新堂誠)
>7Y6

「人間の生と死に関する百日の動向!」

僕は、襲いかかる福沢に、レポートのタイトルを叫んだ。
突然、福沢の動きが止まった。
「なんで、知ってるの!?」
暗くて読めないが、僕は、手に持ったレポートを福沢の前に突き出した。

「これを科学室で見つけたのさ!
お前は、ひどい女だ。こんなものを受け取る教師も教師だがな」
「返してっ!」
福沢が、そのレポートを奪おうとしてきた。
だが、簡単には渡せない。

「おっと! これがそんなに大事かっ!」
僕は、福沢の手をすり抜け、レポートを高く持ち上げた。
「返してよっ!」
福沢にとっては、よほど大事なレポートなのだ。

そりゃそうだ。
一人の人間の死ぬまでの記録を取ろうなどという大それたレポートなのだから。
「あっ!」
福沢に引っかかれ、レポートは僕の手から落ちた。
そして風に乗り、レポートは舞い上がると、窓の外へ飛んでいった。

「私のレポート!」
「あぶないっ!」

福沢が窓の外に手を伸ばしたとき窓枠が折れた。
窓枠の木が腐っていたのだ。
何十枚という真っ白い紙とともに福沢の身体が宙に舞った。

落ちていく福沢は、落ちながらも僕を睨みつけ、何やら呪いの言葉を吐いていた。
ドシャリという重いものが地面にたたきつけられる音が響き、僕は、窓から身を乗り出した。
落ちないよう気をつけながら……。

下では、福沢が大の字になって倒れていた。
首は、あらぬ方向にねじれ曲がっていた。
完全に首が折れている。
月明かりに照らされ、白いセーラー服の上に、まるで紙吹雪のようにレポート用紙が舞い落ちていった。

生と死に関する記録をつづったレポートは、完成することなく、福沢の上に降り積もっていく。
福沢は、自らの死をもってレポートを完成させたのかもしれない。
……そうだ。
こうしてはいられない。

僕は、急いでトイレの桟に手を伸ばし、アンプルをつかんだ。
落とさないように、そして、握り潰してしまわないように、ゆっくりと。
僕は、そのアンプルのふたを取ると一気に飲み干した。
時計を見る。

……ふぅ、どうやら、間に合ったようだ。
これで、僕は助かったのか?
時間が来るまで、ここで待っていよう。

僕は、何度も深呼吸をし、もう一度時計を見た。
約束の時間は、すでに過ぎていた。
……僕は生きている。
僕は、助かったんだ!
自然と涙がこぼれ落ちる。
生きてるって、こんなに素晴らしいことなのか。

僕は、生まれて初めて、生きてる喜びを噛み締めた。
……よかった。
僕は、もう一度ため息をついた。
どうする?

このまま、ここで朝を迎えるか?
それとも、家に帰ろうか?

◆美術室で風間を倒していない場合
1.ここで朝まで待つ
2.家に帰る


◆美術室で風間を倒している場合
1.ここで朝まで待つ
2.家に帰る