学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>A3

「先生、いいんですか?」
僕としては願ったりかなったりだ。
先生は、いっそう嬉しそうに顔をほころばした。
「ああ、先生が許してんだ。大船に乗ったつもりでいろ。……ただ、一つだけ約束してくれよ」

「何でしょうか?」
「……先生が旧校舎に連れていったなんて内緒だからな。先生が怒られちまう」
そういい、照れ臭そうに笑った。
黒木先生って、いい先生みたいだ。
僕たちは、大きく頷いた。

「よし。じゃあ、先生についてこい」
頼りになるのは、懐中電灯のぼんやりとした明かり一つだけ。
先生は、先頭になって足元を照らしながら歩き始めた。
そして、ゆっくりと歩きながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「……君たちは、戦時中のことを知っているか?」
「いえ、知りません」

「戦時中はこの辺も大変でな。もっとも、先生もまだそのころは生まれていなかったから、詳しいことは知らないよ。でもな、先生はこの学校の出身でね。先生がここの学生だったころは、まだ旧校舎で授業を行っていたんだ。
その時、みんなの間で噂になった話なんだけどな。……ここだよ」

そういうと、先生は、ふと足を止めた。
そして、何やら壁に向かって懐中電灯を照らしている。
「……やっぱり昔のままだ」
懐中電灯を壁の一点で止め、先生は懐かしそうに壁をさすり始めた。

「ここの壁の色だけ、ほかと色が違うの、わかるか?」
そういうと、先生は懐中電灯を少し振って見せた。
そういわれると、確かに少しだけ壁の色が違うように思える。
そして、先生はゆっくりと話し始めた。

……この旧校舎って、昔、戦時中に一回壊れたの知らないだろう?
もう、あれから五十年も経つんだからな。
先生がまだここに通っていたころは、もう少し、ましだったんだけどな。
今は、こいつも取り壊されることになっちまった。

実はな、この壁の向こうにはあるものがあるんだよ。
それを、あとから埋めたのさ。
何があったと思う?
1.教室
2.階段
3.トイレ
4.死体置き場
5.倉庫