学校であった怖い話
>七話目(岩下明美)
>Q3

そうか、興味ないのか。
まあ、それもいいさ。
でも、俺は新聞部の部長としての責任があるからな。
七不思議の特集をするといったのは俺なんだし。

俺の立場としては、七つ目のこの話を話さなければいけないんだよ。
だから、このまま俺の話を聞かなかったら、七不思議にはならないんだ。

そう、六不思議のままさ。
そんなの話にならないだろうが。
だから、悪いがここでおまえが興味がないといったとしても俺は話すぜ。
そうだな、だったらその倉庫にあるものを見てしまったやつの話をしてやろう。

この場にいる六人は、誰もが怖い話には目のない連中だよな。
それで、学校にまつわる怪談も、相当詳しいだろう。
だから、白井の噂話も、かなり突っ込んだところまで知っているはずさ。
もちろん、倉庫の噂もな。

けれど、あの倉庫の中に何があるかを知っている奴は誰一人としていない。
誰も見たことがないんだからな。
……でもな、その秘密を俺は知っちまったんだよ。
これは、神に誓って本当だ。
俺は嘘はつかない。

なぜなら、その倉庫に入ったのは、俺なんだからな。
……どうだ、驚いたか?
もちろん、いくら俺でも、一人ではできなかった。
同級生の岩山康夫という相棒がいたから、できたことなんだ。
新堂なら、岩山のこと知ってるだろ?

あいつだよ、あいつ。
あの手先の器用な奴。
手が早いともいうな。
あいつ、泥棒になったらいいとこまでいくと思うんだけど……それって犯罪か。

白井の鍵の管理は有名だ。
倉庫の鍵だけで三つもあるのに、それを鍵のかかる戸棚の中の、さらに金庫の中に入れてやがる。
実をいうと、この計画は、かれこれ半年ほど前から進めていたんだけどな。
もし、白井の秘密を解き明かせば、それだけでスクープ間違いなしだからな。

本当は、こんな学校の七不思議特集の一つとしてじゃなく、バーンと特ダネ・トップで発表したかったんだけどな。

何だかんだともたついているうちに、旧校舎の取り壊しに合わせた七不思議の企画が持ちあがっちまって、俺としてはちょっと残念な結果に終わろうとしているわけだ。
ま、今回はかわいい後輩に花を持たしてやろう。

それで、俺と岩山は半年かかって、ようやく倉庫の鍵と同じものを作ることに成功したのさ。
犯罪だなんて、いわないでくれよ。
マスター・キーはきちんと元の場所に返したし、何も倉庫のものを盗もうってんじゃないのさ。

秘密があれば、その謎を解きたくなる。
それが記者魂ってもんだろ?
……それで、ついに実行に移した。
白井が、週に一度休みを取っているのは知っている。
それで、その隙を狙って、ついにその倉庫への侵入を決行したのさ。

最初は、合鍵が合うかどうか不安だった。
何でも、特殊な鍵だったらしくてな。
普通の方法じゃ、作れない鍵なんだそうだ。
それでも、うまくいった。
鍵を三つとも外すことに成功したのさ。
倉庫の扉は鉄製の頑丈なものだ。

音がしないようにゆっくりと気をつけながら開けても、鉄のさびたギチギチという耳障りな音がしてしまう。
その音がやけに大きく聞こえてな。
恥ずかしいことに、心臓が破裂しそうだった。
本当に泥棒に入るような心境だったのさ。

中は真っ暗だった。
窓は一つもなく、とても嫌な臭いが辺りに充満していた。
そう、なんていうか……。

なあ、坂上。
それは、どんな臭いだったと思う?
1.卵の腐ったような臭い
2.きついホルマリンの臭い
3.死体を燃やしたような臭い
4.息が詰まり、むせ返るような臭い