晦−つきこもり
>五話目(前田和子)
>B10

……ダメ。
これ以上のことはできないわ。
恥ずかしいもの。
「葉子ちゃん、どうしたの?
なんか、キイキイ声が聞こえたけど」
がくりと肩を落とした私の顔を、和子おばさんが覗きこんだ。

「あっ、な、何でもないですっ」
私は慌てて鼻から手をどけ、その場をごまかした。
「そう、じゃあ、質問するわね。
……こほん。あ、あの……。
か、風間さん。あの、私、わかります?ダンスサークルの和子ですけど。あのう、私って、どう見えます?」

(……和子さん、なんでそんなことを聞くんだい?
もしかして、わたしのことが気になっているのかい?

ふふっ……、これから君のことを、和子って呼んでいいかな?
和子、もっと近くにおいで。息がかかるくらいにね……)

「葉子ちゃん?
どうしてそんなにねっとりとした目で私を見るの?」
……和子おばさん、助けて。
自分の意志とは無関係に、体が動いちゃうの。
「葉子ちゃ……」
私は、和子おばさんの肩に手をかけた。

なんなの、これは。
風間さんの生霊がやっているの?
(……和子。君がどんな女性に見えるかって?
ふふ、素敵だと思っているよ。当然じゃないか。だから、いいだろ……?)

「葉子ちゃんっ? なんでそんなに顔を近付けるの? ねえ、風間さんは何ていってるの?」
和子おばさん、戸惑ってる。
困ったわ。
どう答えよう?
1.真実をありのままに
2.事実をにごして
3.ウソ八百ならべたてて
4.風間さんの言葉を誇張して