晦−つきこもり
>五話目(前田和子)
>O10

「にゅるにゅる」
私は、腕をぐにゅぐにゅさせてみた。
「……葉子ちゃん?」
みんなが変な目で見ている。
……………。
何でこんなことをしてしまったの?

もう私、お嫁にいけない!!
(……葉子ちゃん。何を悲しがっているんだい?
しょうがないな。わたしの胸を貸してあげるから。飛び込んでおいで。そう、歩みを進めて。

さあ、おいで……)
「ちょっと葉子ちゃん! どこ行くのよ?」
い、嫌っ!
体が勝手に動いちゃう。
どうしよう、完全に乗り移られてる。
私は和子おばさんに抱きとめられながら、ふらつく足取りで坐りなおした。

危ないわ。
慎重にしないと……。
「すみません、驚かせて」
「大丈夫?」
「ええ、……大丈夫です」
「そう、じゃあ、質問するわね」
え?

ちょっと待ってよ、和子おばさん……!
「風間さん。あの、私、わかります?ダンスサークルの和子ですけど。あのう、私って、どう見えます?」
(……和子さん、なんでそんなことを聞くんだい?
もしかして、わたしのことが気になっているのかい?

ふふっ……、これから君のことを、和子って呼んでいいかな?
和子、もっと近くにおいで。息がかかるくらいにね……)

「葉子ちゃん?
どうしてそんなにねっとりとした目で私を見るの?」
……和子おばさん、助けて。
自分の意志とは無関係に、体が動いちゃうの。
「葉子ちゃ……」
私は、和子おばさんの肩に手をかけた。

なんなの、これは。
風間さんの生霊がやっているの?
(……和子。君がどんな女性に見えるかって?
ふふ、素敵だと思っているよ。当然じゃないか。だから、いいだろ……?)

「葉子ちゃんっ? なんでそんなに顔を近付けるの? ねえ、風間さんは何ていってるの?」
和子おばさん、戸惑ってる。
困ったわ。
どう答えよう?
1.真実をありのままに
2.事実をにごして
3.ウソ八百ならべたてて
4.風間さんの言葉を誇張して