晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2A3

俺達は一番手前の部屋に入る。
部屋の中は薄汚れていたが、家具はきれいに並べてあった。
タンスの上には、古いアンティックドールが置いてある。
カーテンは汚れてぼろぼろだが、昔はきれいな花柄だったんだろう。
そして、ベッドや机があり、机は小さい子供用らしかった。

「子供部屋ですかね」
河口君が淡々と、そう呟く。
この部屋の窓には、あまりツタがかかっていなかった。
その窓からは、月明かりがこうこうと差し込んでる。
(あれ、人形?)
窓の前には揺り椅子があった。
椅子には大きな人形が座り、この部屋の主のようだ。

その人形は遠目で見ると、まるで人間の子供のようだった。
しかし煌々と照らす月明かりで、それが人形とすぐにわかる。
ここに百年間、座り続けたと思うと感慨深かった。
俺は部屋の奥に進んでいく。
みんなも俺に続いた。
そして俺は窓のところまで行くと、庭を見た。

庭には生け垣の迷路が造られている。
それは多少荒れてはいたが、百年近く手入れがされていないとは思えなかった。
俺は振り返ると、タンスの上を見る。
そこには、アンティックドールがきれいに並べられていた。

月明かりは、何体も並ぶアンティックドールを照らしている。
(あれ、あの脇にあるのは……)
並ぶアンティックドールの脇に、日本人形が置いてあった。
(なんだろう………)
不思議だった。

(でも明治だもんな。アンティックドールの方が珍しいんだ………)
俺はそう納得すると、部屋を見回す。
するとみんなは、思い思いに物色し始めた。
河口君はタンスを開けている。

「子供服だ」
そんな彼の後ろには、ADの吉川が身を潜めている。
河口君より一回り大きい吉川が隠れているのは、少し滑稽だった。
俺はじゅうたんが少し黒ずんでいるところに向かう。

「まさか、血じゃないだろうな」
それはまるで血の痕のようだった。
1.日本人形をもう一度見る
2.揺り椅子の上の人形の所に行く
3.アンティックドールの所に行く
4.床の染みを詳しく見る