晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2E3

扉を開けると、ほのかに甘い香りがする。
(女性の部屋かな………)
俺は中に入った。
そしてみんなも中に入ると、部屋の中に散らばった。
吉川は河口君の後ろを、びくびく付いて回っている。

「河口さん、もっとゆっくり歩いてくださいよ」
仕事のときには想像できない姿だ。
「うるさいな、離れろよ」
河口君は歩くスピードを更に上げる。
俺は苦笑しながら、そのコントを見ていた。

「泰明さん、宝石がありますよ」
河口君は、タンスの上の小箱を開けて叫んだ。
俺は小走りにそこへ行った。
「本当だ。しかしそれ本物なのか………」
河口君の顔を覗き込むようにして、俺は尋ねた。

「俺はこういうものは、よくわかりませんが………」
そういって、河口君は首を傾げる。
「でも本物なら、何で長い間放置されていたのかな」
俺も首を傾げて、そういう。

「まあ、とにかく明日、問い合わせてみるよ」
警察沙汰になり、撮影の準備に影響出なければと思いながら、そういった。
そして彼等は、何かを求めて歩き出す。
俺はそこに取り残された。
部屋を見渡すと、花田さんは鏡台の所で何かを捜している。

(ちょっと花田さんと、鏡台というのは違和感あるよな………)
俺は苦笑しながら、そう思った。
「これがこの部屋に住んでた人かな」
河口君はそういって、部屋の壁に掛けられている絵を見ている。

その後ろには相変わらず、吉川が引っ付いていた。
(あの宝石といい、この部屋の主はこの屋敷の婦人だな………)
俺はそんなことを考えていた。
(あっ………)
河口君がふざけて、弦を弾く。
彼等は部屋の隅で、琴を見つけたらしい。

俺は我に返った。
「琴じゃあないか………、何か洋館には似合わないな」
改めて、琴を見てそう思う。
それは朱塗りの真っ赤な琴だ。
(真っ赤な琴………、珍しいな………、あんな琴、見たこともない………)
俺は我を忘れて、その琴を見つめた。

なんか不思議な部屋だ。
俺は改めて、部屋を見回した。
1.鏡台を見る
2.絵を見る
3.宝石が気になる
4.琴の所へ行く