晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2L3

俺達は右の手前の部屋に入った。
この部屋は書斎のようだ。
多分、この屋敷の主が使っていたのだろう。
壁が一面、本棚に覆われている。
中には金文字でタイトルがかかれているような、立派な本が入れられている。

それらは英語のタイトルのものが多く、当時輸入された本だろう。
内容は、多方面に及んでいる。
正面には河口君達がいた。
引き出しを開けたりして、何か捜しているようだ。

「なんだこれ………、まだ使えるのかな………」
吉川は、河口君の後ろに隠れている。
しかし怖い物見たさというのか、河口君が示す物を恐々と見ていた。
そして一通り見終わると、河口君は右側の本棚の所に行く。

河口君はその本の一つを取り、興味深げに見始めた。
「これは民族学関係の本ばかりだな。それに原始宗教に関するものが多いな」
なんか学者のように呟いていた。
俺は花田さんを探した。
彼は左の本棚の所にいる。

彼の前にあるのは、文学の本のようだ。
(花田さんらしいな………)
俺はそれぞれの行動が、なんか微笑ましく思えた。
(あれ、河口君は………)
河口君が消えていた。
俺が彼の姿を探す。
そして吉川の体から、河口君が垣間見えた。

正面の本棚を物色しているようだ。
「ホムンクルス………?」
どうも錬金術の本らしかった。
ここの主は、神秘的なものが好きだったらしい。

(しかし、貴重そうなものばかりだ………、なぜほうって置くんだ………、図書館や博物館にでも置けば、いい資料になりそうなものばかりなのに………、それとも、そんなに大したものではないのか………)
俺はそんな俗物的なことを考えた。

横で気配がして、俺は振り向いた………。
(えっ………)
花田さんだった。
俺は驚きを隠しながら、こういった。
「花田さん………、どうしました………」
しかし、どうも驚きを隠せなかったらしい。

「どうした、泰明君。驚かしちゃったかな、ははっ」
俺は笑ってごまかした。
そして俺は何とか立ち直って、明るく振る舞う。
「凄いですね、この部屋の本は」
花田さんは、その話に乗ってきた。

「俺はあらためて、明日、見せて貰おうと思うんだ。いいかな、泰明君」
彼はまるで玩具を前にした、子供のようだった。

「もちろん、いいですよ。この部屋は掃除するだけで、ほぼこのまま使うことになるでしょうから」
実は俺も、そうしたいと思っていたところだった。
そして花田さんは軽く礼をいうと、また本棚に向かった。
みんなもそれぞれの所で、物色している。

「さあ、俺も明日の下見をするかな………」
1.左の本棚に行く
2.右の本棚に行く
3.正面の本棚に行く
4.机の所に行く