晦−つきこもり
>一話目(真田泰明)
>A1

最初は俺か。
俺がはじめだとみんなが話しづらくなるな。
後悔するなよ、ははっ。
あれ、電話だ。
ちょっと待ってくれないか。
『もしもし、真田です。ああ、おまえか。どうしたんだ。

なんだ、そんなことぐらい自分で判断しろよ。うん、それでいいから。そのまま進めていいよ。じゃあ、明日には戻るから』
ごめん、ごめん、あいつら何でも俺を頼るんだよ。
プロデューサーっていう仕事は子守じゃないって言いたいよな、ははっ。

あっ、話を続けるよ。
最近のテレビの映像ってかなり変わって来たよね。
衛星中継、特殊カメラなど、技術の進歩は凄まじいよ。
特にコンピューター・グラフィックス(CG)なんか、あたりまえのように使われるようになってるだろ。

霊や魔物なんかとは、まったく無縁のような科学テクノロジーの世界。
これから話すことは、そこにも魔性が潜んでいるという話なんだ。
ピアノに霊が宿る話や、ガラス、鏡。

今や怪談の定番のようなアイテムも、かつては最新技術だったことを考えると何の不思議もないけどね。
一年ぐらい前かな。
俺の番組でもCGを使うことになったんだよ。
ルネサンス時代の無名画家の絵の復元のためにね。

無名画家の絵は、すぐに駄作なんて考える人が多いためか、ほとんどの絵は保存状態が悪くてね。
赤外線やX線などの最新技術を使い、残った絵を分析してCGとして当時の姿を再現する。
これが番組の売りだった。

そして、復元するための絵をX線で調査したら、絵のうしろにもう一つ絵が隠されていたのが発見されたんだ。
当時は画材も高かったし、描いているうちにイメージが変化していって全然別の絵になることもあったから、別に珍しいことじゃないんだけどね。

でも、そんなうしろに描かれている絵の中には、わざと隠したものもあるらしいんだ。
まさか、後の時代で中を透視されるとは思わなかったと思うよ。

葉子ちゃん、その絵のうしろには何が描かれていたと思う。
かなり意外なものだから当ててごらん。
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